おなじみのドトール。最近は白を貴重にした外観のお店も増加中

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「カフェ・ミュージック」なんて言葉があるように、カフェのBGM=オシャレなものという認識が定着している昨今。そんな中で、音楽好きからひそかな注目を集めているのが、ドトールコーヒーショップ(以下、ドトール)の店内BGMだ。

「え、そうなの?」と思う人も多いかもしれないが、確かにドトールで流れている音楽は「うわぁオシャレ!」と誰もが反応するものではない。何かこう、やたらと選曲が通好みでシブいのである。

TwitterでそのBGMへの反応を検索すると、
「70年代のAORがかかっていてぐっとくるんだよね。ネッド・ドヒニーとかさ」
「またロジャー・ニコルズが流れてる!」
「ハーパース・ビザールもフリー・デザインもかかってる!自分しか聞いてないけど(笑)」
というような、音楽通らしき人が思わず反応してしまった声がわさわさ出てくる。

いわゆる“オシャレ風なカフェミュージック”ではなく、ソフトロックやAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)などの王道を行く名曲が多く流れている……というのが、ドトールのBGMの特徴のようだ。

そこで今回はドトールの本社に伺い、そのBGMの選曲の裏側について聞いてきた。

まず選曲については、「株式会社USENの担当者にドトール専用のプレイリストを作成していただいている」とのこと。実際に今年の4月8日〜21日に使用されたプレイリストを見せてもらったのだが、これがスゴい!

下に画像として掲載したのは「Cafe Bossa& Sunshine Pops」「A.O.R」というプレイリストなのだが、ミレニウム、ホリーズ、アルゾ、TOTO、ケニー・ランキンなどなど、「わ、この人も入ってる!」と音楽好きが反応してしまう名前が盛りだくさんだ。

PopsCafe Bossa& Sunshine Pops(※本来は1つのリストですが、画像の表示サイズの関係で2つに分割しています)

A.O.R

「店内BGMが今の形になったのは3〜4年前からですね。ドトールはオープンから昼前はゆったりと大人な方が多く、お昼に近づくとぐっと若めの方が多くなり……というように、時間帯により客層が変化します。そこで現在の店内BGMは、その変化に応じる形で、時間帯ごとにテーマを設定。それぞれ30〜70曲程度のプレイリストを約1カ月ごとに作成して、そこからランダム再生を行っています」

そう話すのは株式会社ドトールコーヒーのBGM担当者。なお担当の方は、自身も「ビートルズ世代で、今もCDを毎月20枚ほど買っている」という音楽好きだそうだ。そのBGM担当者と、株式会社USENの選曲担当者(同社のジャズ・チャンネル全般のプログラムディレクター)が相談を重ねながら、それぞれの時間帯のテーマ・選曲を固めていったそうだ。

各時間帯の選曲のテーマと、そのテーマに当てはまる代表的なアーティストは以下のような感じ(一部店舗は深夜〜明け方のプレイリストもあるが本稿では割愛)。「『年齢層がやや高めの男性客を中心に、全世代に支持されている』というドトールの客層も考慮し、音楽として主張しすぎないことを意識しながら、きちんと『本物』を選ぶように意識しています」(USEN選曲担当者)とのことだ。

7時〜11時
Morning Cafe compilation(モーニング・カフェ・コンピレーション)

世界中のフレッシュなアコースティック系ポップス。一日を清々しくスタートしてほしいという思いをもとに作成。

ジョルジオ・トゥマ
ステレオ・ヴィーナス featuring ルーマー
アレクシア・ボンテンポ

11〜14時
Cafe Bossa & Sunshine Pops(カフェ・ボッサ&サンシャイン・ポップス)

本物のボサノヴァやソフトロックで明るく陽気に演出。60代以上には懐かしく、20〜40代には新鮮に感じるサウンドになるようにセレクト。

ロジャー・ニコルズ
クロディーヌ・ロンジェ
アストラッド・ジルベルト

14時〜17時
Afternoon Cafe Compilation

コーヒータイムに合う音楽をジャンル、世代を問わずセレクト。前後の時間帯のつなぎにもなるよう、ブラジリアンやジャジーな楽曲も。

セルジオ・メンデス
ミシェル・ンデゲオチェロ
ジョー・バルビエリ

17〜19時
New Adult Contemporary(ニュー・アダルト・コンテンポラリー)

「オトナの遊び心をくすぐる選曲」をテーマに、西海岸テイストのスムース・ジャズをセレクト。

ダウン・トゥ・ザ・ボーン
フォープレイ
デイヴ・コーズ

19〜21時
A.O.R(アダルト・オリエンテッド・ロック)

A.O.Rのスタンダードチューンからレア音源まで80'sテイストで選曲。ロックを基調に、ジャズやソウル、フォーク、ブラジリアンのエッセンスも織り交ぜる。

ドナルド・フェイゲン
マイケル・フランクス
ボビー・コールドウェル

どうだろう。人により反応する部分は違うだろうが、いろいろな音楽を聞いてきた人なら「……なかなかやるな!」と感心するようなアーティストが名を連ねているのではないだろうか。

またドトールでは、スピーカーの配置等にもこだわっているそう。

「カフェという空間には常にお客様がいらっしゃいますし、話し声も聞こえます。そのような状況下で聞こえやすい音域から調べ、それに合わせたスピーカーを使っています。なおスピーカーについては、店内のどこに座った方でも、音楽が聞こえやすい配置を意識していますね」(ドトールコーヒー設計担当者)

このように選曲も音へのこだわりも“本気すぎる”ドトールだが、そこには押し付けがましさのようなものは一切感じない。

「お店に来ていただいたお客様には、何もせずにくつろぐ前向きな時間を過ごしていただければ……と思っています。だから音楽も、ふとした瞬間に耳に入ってきて『何かいい曲だな』と思えるような、あくまでさりげないものでありたいですね」(ドトールコーヒーBGM担当者)

基本的には落ち着いた雰囲気で、スタンダードかつ本物。そして安心感があり、ときには懐かしさも感じられる。そんなドトールの店内BGMの選曲は、ドトールに居心地の良さを感じている人が、ドトールというお店に抱いているイメージにぴったり重なるのではないだろうか。

音楽好きは間違いなく喜ぶし、特に意識していない人が聞いても「何かいいな」と思える曲が並ぶドトールの店内BGM。次に訪れたときは、ぜひ耳を傾けてほしい。