学生の窓口編集部

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回転ずしではなく、板前さんに注文するすし屋に入ると緊張しますよね。初めて「回らないすし屋」に入った際には、どのように食べていいかなどに困るのではないでしょうか。そこで、回らないすし屋さんでのアレコレについてご紹介します。

すし職人の人に「どんな順番に注文したらいいですか?」「箸で食べないと駄目ですか?」といった取材をすると、「お客さまのお好きなように召し上がっていただければそれがベストです」みたいな答えが返ってくることが多いです。

これは模範解答であって、「こうした方がいいのでは」というすし屋での身の処し方はもちろんあるわけです。そこで、バカな筆者がすし職人の親方に取材した「すし屋での『こうしよう!』」をまとめてみました。

●すしは手で食べるのが基本!

すしを箸で食べる人がいますが、すしは「付け台」に置かれたものをすぐに手でつまんで口に放り込むものです。そもそもすしはファストフード、屋台で提供されるものとして始まっています。江戸時代には庶民のざっけかけない食べ物で、すし屋が握ったものをひょいと手でつまんで食べるもの、だったのです。

現在すしは高級な食べ物になっていますが、すしの歴史を思って手で食べてみてはどうでしょうか。

●ひっくり返してネタにしょうゆを付ける!?

すし屋でどうやってネタにしょうゆを付けるか、はよく議論になります。手で食べる際には、すしをつまんだ後ひっくり返し、ネタ側にしょうゆを付けて口に入れるのが良いでしょう。バカな筆者がすし職人の方に伺ったところでは、明治・大正時代にはそのような食べ方があり、それは江戸時代から続いているのではないか、ということです。

調べてみましたら、志賀直哉の『小僧の神様』という短編小説にそのようなすしの食べ方が通の食べ方として確かに描かれています。『小僧の神様』は1920年(大正9年)に発表された作品ですので、その食べ方は明治時代から続いてきたものでしょう。

また、江戸時代までさかのぼれるかもしれません。
●軍艦巻きにはどうやってしょうゆを付ける?

ウニなどは軍艦巻きにして供されることが多いですが、この軍艦巻きにしょうゆを付けるときにはどうすれば良いのでしょうか。よくある回答として、

・ガリにしょうゆを付け、それをはけにしてネタにしょうゆを付ける。

というものがあります。これが正解なのかをすし職人の方に伺っても「お好きなようになさってください(笑)」ということですが。実は、軍艦巻きというすしのスタイルは新しいもの(1941年に誕生したといわれています)で、「ガリにしょうゆを付けて……」というのも新しいマナーの提案なのです。

●食べる順番は!? 味の薄いものから濃いものへ、が基本

ネタを頼む順番。これもよく議論になります。板前さんは「お好きな順番で」と言ってくれますが、もちろん教養としての基本ルールはあります。それは「味の薄いものから濃いものへ」と注文していくことです。ですから、煮詰めを塗ったアナゴなどは最後の方になることが多いのですね。

マグロのいいところばかり頼むと嫌われる理由

ネタは満遍なく注文するのがマナーです。いくら好きでも「中トロ」ばかり食べたりするのはいけません。マグロのいいところばかり食べる客は間違いなく嫌われます。マグロは仕入れ価格が高価で、他のネタと同じように利益率を反映するととても高額になります。

そこで、マグロの価格を下げるために、そのもうけ分を他のネタに配分するなどの調整を行っているのです。マグロのいいところばかり食べることは、下手するとすし屋さんに赤字を積み上げることになります。もちろんお客さんは好きなものを食べればいいのですが、「満遍なく食べるのがマナー」は覚えておく方が良いでしょう。
●符丁は知っていても使わない方が粋!

すし屋では、昔から使われている符丁があります。例えば、「アガリ=お茶」「むらさき=しょうゆ」などは有名ですね。でも、この符丁は客が使うものではありません。「アガリちょうだい!」なんて言う人がいますが、これは「知ってるよアピール」になって格好悪いです。

符丁は知っていても自分では使わないのが粋というものです。

いかがでしたか? 上記のとおり板前さんに聞いても「お好きなように召し上がってください」という答えが返ってきます。「すしの食べ方に正解はない」という話もありますが、今回紹介したような考え方があるということはぜひ知っておいてください。

(高橋モータース@dcp)