六本木ヒルズから見た東京タワー(撮影:吉川忠行)
首都圏の地上デジタル放送の発信拠点となる「新東京タワー」(仮称)の建設候補地が、今月末には絞り込まれる見込みだ。新タワーは地上デジタル放送以外に、災害時の情報発信やテレビ付き携帯電話・車載テレビといった、移動体向けの情報発信にも利用される。各候補地には今月末までに、NHKと在京民放テレビ5局で構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」(幹事会社:テレビ朝日)から選定結果が伝えられることになっている。

そもそも新タワーは要らない?

 04年9月24日、石原慎太郎・東京都知事は定例会見で記者から新タワーについて質問されて、「どこにもつくる必要はないと思う。大体システムが変わろうとしている時代に、あんなばかでかいタワーが要るかどうか、それはもう基本的な問題だ」とバッサリ。

 この不要論を各候補地の担当者にぶつけると、「放送事業者が必要と言うから名乗りをあげた」「携帯電話をはじめ、移動体向けの電波塔としての需要はある」といった答えが返ってきた。地上デジタル放送はケーブルテレビなどで代用できても、移動体向けの電波塔は必要だということだ。

 また、災害時の情報発信拠点の整備の必要性を説く点も共通している。特に都内の候補地と比べ、立地で不利と言われている「さいたまタワー」の担当者は、「東京で万一のことがあっても大丈夫です」と、国の広域防災拠点でもある「さいたま新都心」が「東京から離れていることの利点」を強調する。

場所・カネ・事業主体

 建設地に関しては、自治体主導の色彩の濃い「さいたまタワー」と、事業主体として東武鉄道が名乗りを挙げている「すみだタワー」はほぼ確定しているものの、他の候補地は「正式に決まるまでは詳細な話を進めにくい」という。しかし、水面下での交渉は着実に進められているもようだ。東京タワー(333メートル)の約2倍の高さとなる新タワー建設には約3年半の工期が必要といわれ、地上波テレビ放送が完全デジタル化され、新タワーが必要となる2011年に完成させるためには、遅くとも2007年には着工されなければならないからだ。

 タワー部分のみの建設費は300億−500億円になると予想される。収入源としては、アンテナの使用料(地上デジタル放送・携帯電話などの移動体関連・防災関連)、展望台の入場料や付帯施設も含むテナント料などが考えられるが、「不動産の証券化」や「ネーミング・ライツ(命名権)」などの提案を行う候補地もある。

 タワーの建設およびその後の運営に関しては、事業主体となる新会社が行うため、各候補地とも原則的には「自治体が財政支出をすることはない」としている。しかし、その会社に自治体も加わって欲しいという意向を放送事業者側が示せば、間接的に税金が投入される可能性も否定できない。なお、複数の関係者の話を総合すると、放送事業者側は、事業主体となる新会社の経営に参画したいという意向もあるようだが、明確な態度は決めかねている模様。

 「新タワー」建設に向けて、足立区、さいたま市、墨田区、台東区、豊島区の各候補地では、いま誘致合戦の最終段階を迎えている。今日から7回にわたって、各候補地における最新の動きを紹介することにしたい。(つづく

■バックナンバー
第2回(台東区・隅田公園周辺)
第3回(足立区・東六月と舎人)
第4回(墨田区・押上/業平橋)
第5回(豊島区・池袋)
第6回(埼玉県・さいたま新都心)
最終回(まとめ)

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