W杯予選を控えたメンバー発表だ。結果を残すためのチーム編成になるのは当然で、サプライズな人選を期待するのは間違っている。
 
 チュニジア、ウズベキスタンと対戦した3月の活動で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は試合ごとにスタメンを入れ替えた。今回はイラクとのテストマッチを経て、5日後にシンガポールとのW杯予選を迎える。

 留意すべきは海外組のコンディションだ。長いシーズンを終えたばかりで、選手によってコンディションが異なる。国内組に先んじてトレーニングを行なっているが、合流のタイミングはまちまちだ。

 5月23日にリーグ戦を終えた岡崎、長谷部、清武らは、イラク戦で実践を積んでおきたい。セリエAでプレーする本田は5月31日に、長友は翌6月1日にリーグ最終戦を終えた。シンガポール戦への助走として、彼らにもイラク戦は欠かせない。もちろん、3月以降の空白を埋めるために、チーム全体として戦術を確認する必要もある。
それだけに、ハリルホジッチ監督は今回の2試合をひと括りに考えているはずだ。
 
 25人のメンバーを見ると、杉本の名前がない。国内組だけで行われた5月の代表候補合宿を経て、この川崎F所属の22歳は注目を集めていた。5月30日のJ1リーグまで、3試合連続ゴールと結果も残していた。

 ハリルホジッチ監督が選んだのは、杉本ではなく川又だった。FW登録には7人が名を連ねるが、1トップの性格が強いのは岡崎と大迫のふたりだ。守備的な相手を力ずくでも押し込みたい局面を想定すると、ゴール前の競り合いに逞しく、空中戦に強い川又を加えておきたかったのだろう。

  同じく5月の候補合宿に招集された浅野も、今回はリストに含まれていない。広島で攻撃のジョーカー的役割を担うU−22日本代表のドリブラーも、25人に割って入ることはできなかった。

 ドリブラーでは原口が選出された。移籍1年目のヘルタ・ベルリンで、この24歳はシーズン終盤に存在感を発揮した。ハリルホジッチ監督のもとでプレーするのは初めてで、代わって3月に招集された乾が外れている。

 浅野ではなく原口、乾でもなく原口というところに、今回の選考基準がにじむ。テストの意味合いを含む招集は、海外組が優先されるということだ。国内組の本格的なテストは、7月の東アジアカップへ持ち込まれる。DF登録で丹羽が、MF登録で谷口が初代表となったが、彼らのポジションには招集に見合う海外組が不在である、という指揮官の認識が透けて見える。

 いずれにしても、このメンバーでどのようなサッカーをするのかが問われる。「タテへの速さ」と「球際の強さ」を土台として、日本人の特徴をチームの強みにできるのか。

 大久保嘉人はなぜ選ばれなかったのか。

 豊田陽平ではなく川又だったのはなぜか。

 ウズベキスタン戦でダブルボランチを組んだ今野泰幸と青山敏弘は、なぜ選考から漏れたのか──そうした疑問に対する答えを、ハリルホジッチ監督はピッチ上で示さなければならない。