気が付けば「9」を数える。Jリーグがパートナーシップ協定を締結したアジア・中東のリーグだ。

 先ごろ発表されたカタールは、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、イラン、マレーシアに次いで9件目となる。カタールは2020年の東京五輪を、日本は2022年のワールドカップ開催を見据え、互いにメリットを見出すことができたようだ。

 日本側から最初に働きかけたいのは、来年1月にカタールで開催されるU−23選手権を念頭に置いた支援だろう。手倉森誠監督が率いるチームは、12月に暑熱対策で中東を訪れる予定だ。

 現地の気候に身体を馴染ませる意味では、開催国の訪問がベストなのは言うまでもない。一方で、リオ五輪の出場権を争うライバルには、カタールも含まれている。「手の内を見せたくない」との思いも過るが、中東からはイラク、ヨルダン、サウジアラビア、UAE、イエメン、シリアもU−23選手権に参加してくる。暑熱対策の場所をどこに選んだところで、情報の流失は避けられないだろう。

 そう考えると、カタールを事前合宿地に選ぶことに迷いはないはずだ。今回の協定を後ろ盾にして、スターズリーグのクラブとのテストマッチも視野に入れたい。

 Jリーグが各国リーグと結んだ協定の中身には、育成年代の人的交流やリーグの組織体制のノウハウの共有といったメニューが並ぶ。それも悪くはないのだが、アジア戦略の性格を全面に押し出してもいいのではないだろうか。

 念頭に置きたいのはACLである。

 今季はガンバとレイソルがベスト8へ進出したが、韓国は4チームが、中国も2チームがグループステージを突破している。一方で、ACLに4年連続で出場しているタイのブリーラム・ユナイテッドは、確実に地力を蓄えている印象だ。東アジアにおけるJリーグ勢の復権はなお遠い。

 準々決勝以降は中東や中央アジアでのアウェイゲームが待ち構える。ACLで勝ち上がらない限り実現しない彼の地での真剣勝負は、ここ数年の低迷によって未知数の度合いが強まっている。協定を結んだカタールやイランと、クラブレベルでの交流を推し進めたい理由のひとつだ。

 たとえば、カタールの首都ドーハを舞台に、Jリーグが協定を結んだ9か国のリーグチャンピオンが集う大会を開催する。日本とカタール、日本とイランといったように、2国間から始めてもいい。

 日本国内には、アジアのインフラ整備に意欲的な企業がある、スポンサーを獲得して賞金大会とすれば、各国の出場意欲を刺激できるとの見通しも立つ。

 そんなゲームをいつできるんだ、という意見があるだろう。リーグチャンピオンは、他ならぬACLに出場する。勝ち上がれば日程はタイトになっていく。

 ここから先は、各国間と日本国内での両面で調整が必要だ。いずれにしても、この発想の根本は「Jクラブのアジアでの経験を高める」ことにある。リーグチャンピオンの出場は必須条件ではない。リーグ戦の2位でも3位でも、ナビスコカップの勝者でもいいのだ。ACLでつねに上位へ食い込んでいくために、Jリーグ全体としてアウェイの経験を積んでいくことを追求したいのである。

 Jクラブが難しければ、ユース年代でもいい。それもまた、価値ある投資となる。「そんなものはできない」ではなく、「どうしたら実現できるか」を出発点に議論を進め、着地点を見出したい。