新人タクシーステッカー。現在、東京都の日本交通と神奈川県の三和交通で導入されている。

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土地勘のない場所でタクシーを拾ったら、ドライバーが新人で心もとない思いをした経験のある人は少なくないのではないだろうか。せめて乗る前に新人かそうじゃないかわかっていれば、そんな私たちの心の声に応えるサービスが登場した。その名もずばり「新人タクシーステッカー」。

このサービスを都内で初めて導入したのは、大手タクシー事業者の日本交通。同社総合営業課の野村貴史さんによると、新人ドライバーの道路知識の不足が原因のトラブルやクレームが入ることが多く、課題となっていた。

実際に都内を運転する人ならわかるだろうが、一言で都内といっても23区とその周辺を合わせるとかなり広い範囲となり、道も複雑に入り組んでいる。日本交通に限らず、どこのタクシー会社でも地理テストや研修に取り組んでいるが、タクシードライバーとして十分な地理知識を習得するまでには1年はかかるという。

さらにタクシー業界自体が人材の流動性が高い業界で、たとえば日本交通の場合でいえば7000人以上いるドライバーの中で、常に1-2割程度が経験1年未満の新人ドライバーである。加えて近年では新卒でいきなりタクシードライバーになるものも増えており、運転の経験自体が浅いドライバーも増えている。

カーナビの性能も向上してきているものの、道路状況は生き物であり、タクシーを利用する乗客は急いでいることが多いので、設定入力にある程度時間がかかるカーナビはあくまでもサポート的な役割と位置づけせざるをえない。こうした変え難い構造の中で、少しでも乗客の不満を解消しようと同社が注目したのが「新人タクシーステッカー」だった。

実はこのサービス、日本交通オリジナルのものではない。同社の提携先である神奈川県の三和交通が3月から導入していたものなのだ。これに注目した日本交通はすぐに一ヶ月間の実証実験に入った。

当初は乗客から避けられる事態も懸念していたが、思いの他そういうことは起きず、逆に「あらかじめわかっていた方が心の準備ができる」という声の方が多かったので、この5月からの導入に至った。目下のところ評判は上々だという。日本交通では 三和交通で導入していたステッカーと同じデザインを採用した。他社がこれに追随するかはわからないが、導入の折に同じデザインを採用してくれれば、利用者の中での認知も高まりやすくなるはずだ。

もちろんタクシードライバーに豊富な道路知識を求めて乗車することもあるだろう。そうした場合は新人タクシーを避けて、10年以上のドライバー経験が必要とされる個人タクシーを探せばいい。しかしそうでない時に新人タクシーと遭遇したら、好みのルートを伝えるなり、カーナビを使ってくれとはっきり要求するなりすればいい。

新人で道路の知識も豊かでないドライバーこそ必死だ。そんな彼らにきつく当たるのではなく、しっかりとコミュニケーションを取りながら、お互いが気持ちよい時間を過ごせるようになるきっかけに、この新人タクシーステッカーがなればいい。
(鶴賀太郎)