ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟

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 仏女優マリオン・コティヤールが、第87回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた「サンドラの週末」。カンヌ映画祭常連監督の社会派ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、病気休職後に解雇を通告された主人公が、復職をかなえるために奮闘する姿を描いた。来日した両監督が、今作で国際派スターを起用した理由や、経済効率を追い求める現代社会に対しての意見を語った。

 うつ病でようやく復職の目途が立ったサンドラは、ある日会社から、職員へのボーナス支給のために解雇すると通告される。同僚の提案で、職員たちによる投票を行い、ボーナスをあきらめてサンドラを再び迎えることに賛成する者が多ければ、そのまま復職できることになる。それを知ったサンドラは、週末に同僚たちの家を一軒一軒たずねて説得することを決める。

 ジャン=ピエールは、難役を演じたコティヤールとの間に「初めて会ったときから、彼女とすぐに一緒に仕事をしたいと思い、そして、彼女も私たちと共に仕事をしたいと互いに思ったのです」とある種の化学反応のようなものが起きたと明かす。コティヤールに最も求めたことは、「ばかげた回答ですが、良い俳優であること。私たちのファミリーの中に完全に入り込み、国際的スター、ファッションアイコンの姿を消して、サンドラになりきること」と明かす。そして、両監督の要望を見事に体現したコティヤールを「次回作ではありませんが、いつかもう一度彼女を起用したい」と絶賛する。

 今作のテーマを「登場人物が人間の尊厳を考えて行動するかしないか、自分に対して誠実であるか否かを考えるかを描き、人間のあいまいさや複雑さの中で、他人の立場に立って考えられるかどうか観客に問う作品」と解説。「弱い立場から、立ち上がって事態を変え、最終的には自分自身も変わるという主人公」を描くためにうつ病という病を選んだ。主人公が女性であることで弱さを強調したのか問うと、「女性だから弱いということではありません。ただし、現在の経済危機のせいで、労働市場で苦しんでいるのは女性だということがわかったのは確かです。弱さはむしろうつにまつわるもので、それは男性にも持ちうるものです」と説明する。

 日本では、経済効率を追い求める現代社会において「ブラック企業」や「自己責任」などという言葉がひんぱんに報じられ、今作で描かれた「連帯」よりも、個人主義的な側面が広がっていることは否定できない。ジャン=ピエールは「経済状況が困難であるために、ヨーロッパでも個人主義がますます増加する傾向にあります。我々の生きている世界が、残念ながら個人主義的になり、他者に対してライバル関係に持つように人々を駆り立てている気がします」と語り、そういった状況を打破するには「連帯を望む意志が必要」だと訴える。

 リュックは「物を持つこと、よりお金を稼ぐことが重視されるが、それはばかげたこと。連帯を持つには家庭、学校での教育がすべて。日本の子どもはチャップリンのような映画史上重要な古典作品を見る機会がないと聞いています。黒澤明や溝口健二など、人間の尊厳や連帯や互いに助けることを教えるような、そういう作品を子どもたちに見せなければいけないのではないでしょうか。自分だけ、自分の家族だけではない、他者を尊敬することを学ぶべきです」と持論を語った。

 「サンドラの週末」は、5月23日Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。