年収が増えるにつれて、朝型人間が増える/貯金が多い人は夜型人間が少ない

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「早起きは健康にいい」「仕事がはかどる」というのはよく言われることだ。しかし、本当にそうなのだろうか。朝早く起きれば、夜はその分早く眠くなるのだから、朝型であろうが、夜型であろうが、実質的な差はないようにも思える。

体質もあるだろう。「私は朝型」あるいは「夜型」という自己認識を持つ人は多い。それが正しければ、夜型の人が無理に朝型に変えるのは、意味がないことになる。

読者の方に「早起き」を提案するのであれば、「何となく良さそう」という以上の「証拠」が必要だ。そこでプレジデントでは今回、500人を対象とした調査を実施。朝起きることが、仕事や健康、プライベートにどのような影響を与えているかを分析した。

まず、「朝型」「夜型」であることと、年収の関係(グラフ)を見てみよう。年収が増えるにつれて、朝型である人の比率が上昇しているのがわかる。年収400万円未満では朝型人間が3割程度であるのに対し、年収900万円前後では5割近くが朝型。年収1400万円では6割以上が朝型という結果になった。

貯金額の違いはもっと鮮明だ。貯金ほぼゼロ(100万円未満)層だと、朝型人間が約2割、夜型人間が約5割であるのに対し、貯金5000万円以上では、朝型が約4割、夜型が約2割と、ほぼその比率が逆転している。

つまり、朝型の人は夜型の人に比べて、平均的に「年収が高く、貯金も多い」のだ。

なおこの結果には、年齢が高い人ほど早起きの傾向があることも影響しているが、その影響を除いても、大きな傾向は変わらない。たとえば、40代に限定して比較した場合でも、年収600万円未満では朝型が3割であるのに対し、年収1000万〜1400万円の層では朝型が6割近い。

■朝型人間は「よく寝る人」だった

では次に「朝型人間」と「夜型人間」は、その生活パターンや考え方がどのように違うのかを見てみよう。この調査における「朝型」「夜型」は、回答者の自己認識(自分は朝型だと思うか、夜型だと思うか)に基づいている。そこには、単純に起きる時間が早いかどうか、寝る時間が遅いかどうかというだけでなく、朝、余裕を持って起きて、自分のために時間を使っているのか、それとも朝はただ始業時間に間に合うよう「ぎりぎりまで寝ているのか」といった意識が反映されている。

まず平均起床時間は、朝型が5時45分、夜型は6時47分。約1時間の違いがある。また、朝型は「目覚めは良く、起きるのはつらくない」が、夜型は「目覚めが悪く、起きるのがつらい」と答える傾向がある。休日はどちらも平日より遅く起きる傾向があるが、2時間以上も遅く起きる人は、夜型人間が圧倒的に多い。

次に就寝時間。朝型は平均で23時5分に就寝し、夜型は0時46分に就寝する。1時間40分の差がある。起床時間は1時間しか差がなかったわけだから、睡眠時間は朝型人間のほうが平均で40分も長い。早起きの人は睡眠時間が短いイメージがあるが、実際には「よく寝る人」だったのだ。

すると、夜型人間が「朝起きるのがつらい」と感じるのも、無理もない。夜型の人は「朝起きるのが苦手」だから「自分は夜型体質だ」と考える人が多いが、この結果からは、単に睡眠時間が短いから「早起きが苦手」で「夜型体質だ」と誤解している可能性も推測できる。当然ながら、夜型人間は「睡眠時間が足りない」と感じている比率も高い。

もちろん、睡眠時間が短くても、あるいは年収や貯金が少なくても、本人がそれで構わなければ問題ない。

アンケートによれば、夜型は健康状態が良い人が少なく、精神的に不安定な人が多い(図上)。配偶者や交際相手がいない人の比率が高く(朝型16%、夜型29%)、幸福度も低い。一方で、朝活をしている人には出世が早く、人間関係もうまくいきやすい(図下)。しかし、仮にそうだったとしても、夜型生活は本人が選んだ道である。

ただ、夜型人間は、「生活パターンを変えたい」と考えている人が圧倒的に多い。では、なぜ変えられないのか? 夜型人間が早起きのデメリットとしてあげたのは、朝起きるのがつらい(30%)、昼間眠くなる(19%)、夜の付き合いができない(14%)といったことだ。どのようにすれば、これらのデメリットを乗り越えられるのだろうか。

■欲望コントロールと段取り力

朝時間の有効活用を提唱している池田千恵氏は、「早起きは楽しまなければ続かない」と話す。

「たとえば朝走る人は、一生懸命やっているのではなく、楽しくてやっているんです。それは、きっと裏で自分の『欲』を満たしているから。欲の中身は、『SNSに記録をアップして自慢したい』かもしれないし、『腹を凹ませて女の子にモテたい』かもしれない。あるいは、頭の中でグラフを作って、『月間100キロ達成した!』とゲーム感覚を楽しんでいるのかもしれない。最初のうちはナマナマしい『欲』であるほど良いのです。その人なりの楽しさを朝に見つけるのが大事です」

早起きは禁欲的にも見えるが、実際には欲望を向ける方向を変えているだけのようだ。人間の三大欲求の一つ、食欲に働きかけるという意味では、朝食の食べ方も重要だ。

「肉が好きなら、朝から肉でいいと思いますよ。朝食の会などでは、ホテルオークラのボリュームたっぷりのフレンチトーストが人気です。甘いものが好きな人なら、前日にケーキやチョコレートを買って帰って『朝起きたら食べよう』と思って寝ればいいんです。最初は早起きしても頭がボーッとするだけですが、それは体が慣れていないから。10日から2週間ぐらいすると慣れてきて、運動や読書などにも『欲求』が向かうようになると思います」(池田氏)

また、夜型は睡眠時間が少ないことからわかるように、朝型に変わるには、夜早く寝ることも大事だ。どうすれば早く寝られるのだろうか。

「早く寝るには、『段取り力』が必要です」と池田氏は指摘する。「11時に寝るには、10時にお風呂に入り、会食は何時までに終わらせるとか、目標から逆算して段取りするスキルが必要です。これは仕事にも必要なスキル。朝型の人はそういう能力が高いので早く寝られるし、仕事もできるという相関関係があるのではないかと思います」(池田氏)

頑張れば夜起きていることはできるが、頑張っても寝られない、頑張るのは得意だが段取りは苦手だという人は要注意だ。

では、「仕事の飲み会があるから夜は早く寝られない」という人はどうすればいいのか。

「新人だったら『僕、朝キャラなんで早く帰ります』というわけにはいかないですよね。そしたら3年ぐらいは諦めて馬車馬のように働いて、君が言うことなら、と認められるようになってから徐々に朝キャラを認めてもらうしかないですね……」(同)

また、夜型人間は「寝つきが悪い」と答える人が多い。仕事などのストレスで眠れず夜更かしし、お酒などに頼っているのだとしたら、一考の余地がある。

「実は私自身が早起きを始めたのは、上司に対する『クソー、今に見てろよ』っていう思いだったんです(笑)。『あなたは会議に出ても意味ないから掃除してて』と会議に出してもらえなかったのが悔しくて、仕事ができる人になりたくて朝に勉強しようと……。すると、夜思い悩んでいたときは、上司の言い方が頭にくるとか、口の曲がり具合がいやだとか、感情が渦巻いて出口が見つけられなかったんですが、翌朝、上司に言われたことを一字一句紙に書き出してみたら、冷静に受け止められたんですね。『上司が言うのももっともだ』と」(同)

嫌なことがあったらさっさと寝て、翌日考えるのが賢いようだ。

「夜中に他人に怒りのメールを送って、翌朝反省するようなことは、誰にもあるんじゃないでしょうか。『イライラ』『クヨクヨ』は朝しましょう、と言いたいですね」(同)

(プレジデント編集部=文)