レッドカーペットに登場した「あん」キャストと監督 (C)LESLIE KEE

写真拡大

 第68回カンヌ映画祭で5月14日(現地時間)、ある視点部門のオープニング作品として河瀬直美監督の「あん」が上映された。

 この日は、隣のレッドカーペットの会場で、ほぼ同時に招待作品として「マッドマックス 怒りのデスロード」が披露された。掛け持ちしたため、遅れ気味にやってきたディレクターのティエリー・フレモーは、「『マッドマックス』とはまったく異なる作品だから、気持ちの切り替えが必要でね(笑)」と語り場内を沸かせ、「カンヌに何度も来ている偉大な監督」と河瀬を紹介。続いて樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、原作者のドリアン助川が、満場の拍手のなか登壇した。

 ある視点部門のオープニングといえば、最近ではソフィア・コッポラの「ブリングリング」がおなじみ。河瀬監督は、「これまで素晴らしい監督の作品が上映されてきた枠に招待して頂いて、誇りに思います」と語った。

 本映画祭を初めて訪れた樹木は、上映に先駆けて行われた日本のマスコミ向けの会見で「こんなに外人がいるのかとびっくりしました(笑)。映画を見るために多くの人々が集まり、夜中まで賑わっている。(映画好きにとっては)中毒になる場所だな、と思いました」と語った。また初タッグを組んだ河瀬監督について、「押しの強さがすごい。これには負けます。内側が燃えたぎっている人」と特有の希林節で監督を称えた。

 祖母と初共演を果たした内田も、カンヌの賑わいに驚きながら「この映画に参加でき、特別な経験ができてとてもうれしい」とニッコリ。一方、89年にジム・ジャームッシュの「ミステリー・トレイン」でカンヌを訪れて以来のカムバックとなった永瀬は、「カンヌは自分にとって特別なところ。そこにまた来ることができて、感謝の気持ちで一杯です。世界の人に見てもらうのが楽しみ」と語った。また今回のカンヌで特に会いたい海外の監督について尋ねられると、「最近台湾で映画を撮影していたこともあり、ホウ・シャオシェン監督に会いたいです」と、数日後に「黒衣の刺客」でカンヌ入りを果たす監督の名前を挙げた。

 「あん」に対する海外の批評家の反応は、「ややセンチメンタル」という声が聞かれた一方、「日本の戦後の暗い歴史に触れ、人間の孤独を表現しながら、詩的な美しさとピュアな力強さをたたえた作品」(仏、リべラシオン紙)という高い評価もあった。(佐藤久理子)