ドイツのメルケル首相は、第2次世界大戦終結とナチスからの解放70年に当たり、国民向けにインタビュー形式のビデオメッセージを2日に発表しました。若い世代に歴史を継承しようとの思いが込められています。要旨を紹介します。(ベルリン=片岡正明)

 質問 「(ナチスの犯罪を)二度と繰り返さない」という言葉が決まり文句となっていますが、いったい何を意味しているのですか。

 答え(メルケル首相) 「二度と繰り返さない」という言葉が陳腐なものにならないよう取り組まねばなりません。

 二度と繰り返さないとは一方で、ナチスの歴史、強制収容所の歴史、少数者や迫害を受けた人の歴史、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)の歴史を分析し、働きかけることです。他方で、今日のわれわれの理想、価値観に注意を払うということでもあります。

 ドイツでは学校や保育園、記念碑などのユダヤ人の施設を警察官が警備しなくてはなりません。別の考えを持つ人、ドイツ人とは違って見える人がしばしば人種差別や過激主義にさらされることは問題です。

 問題が最初に始まったところに注意を向けるべきです。政治でもそうですし、一人一人が市民的勇気を持つことでもそうです。幸いなことに、人種差別や過激主義に対し、若者を含め多くの人たちが立ち上がっています。

 質問 ナチスからの解放記念日など数日の記念日だけに、過去の克服を集中するのは危険ではないですか。

 答え 記念日には、はっきりしたことを考えます。時の流れが早いわれわれの時代には、繰り返し訪れる記念日はいいことだと思います。そうでないと、別のことに押されて、歴史の取り組みは後回しにされることでしょう。

 しかし記念日だけでは十分ではありません。記念日を迎えることは歴史を知ることですが、基礎知識を学校や社会でさらに広め、継続的に学ぶことが必要です。

 質問 ギリシャからは1942年に強制的に借用されたお金を返せという要求が出ています。一方で、ドイツでもギリシャでも過去に自分たちの将来を縛られたくないと思う若い世代がいます。

 答え 若い人たちの気持ちはわかります。でも、私は歴史に終止符を打つことはできないと思います。ギリシャや他の欧州諸国との討論の中でも、歴史に終止符はないということがいえます。

 ドイツ人には、ナチス時代に引き起こしたことに、注意を怠らず、敏感に対応する特別の責任があります。他の国に長く続く痛みと懸念があることは当然ですし、よく理解できます。だからこそ終止符があってはならない。

 そして、若い人たちに対しても言いたい。第2次世界大戦後、ドイツが発展し、欧州が統一の方向にむかったことで、多くのいい点がありました。だからこそ欧州の歴史を、そして各国それぞれの歴史をいつも振り返るべきです。