GW明け頃から不安定になりがち
 意気揚々と入社してきた新人が、見る見るうちにやる気を失っていく。遅かれ早かれ会社に出てこなくなるのではないかという懸念もある。そんなとき、どうすればいいのか。

 江戸の下町を舞台に、“ぼんくら”と名高い同心・井筒平四郎が甥の弓之助少年と難事件に挑む時代小説『日暮らし』(宮部みゆき/講談社文庫)。本作には下町ならではの「人づきあいの知恵」が多数登場する。新人のやる気を取り戻すためのヒントを探った。

◆すぐにひと声かける

 本作では豪商・湊屋総右衛門と妻、愛人の20年以上に渡る愛憎劇の全貌が明らかになる。いっそ、正面からぶつかれば、もっと早く解決できたはずだと、平四郎は悔しがる。

「早めに刈り取って平らにしておけばよかったものを、ぐずぐずしているから根を張り、枝が茂り、今となっちゃ面倒くさくて、誰も手入れができゃしねえじゃねえか」

 新人のやる気にかげりが見えたら、なるべく早く行動に移したい。空振りを恐れず、ひと声かけるのも一案。ぐずぐずしていると悩みは深くなり、にっちもさっちもいかなくなる。「乱暴なずぼらさが、今いちばん必要」(平四郎)という瞬間もある。

◆一人前として扱う

 平四郎の甥・弓之助は大人も舌を巻くほどの頭脳の持ち主。だが、13歳になってもおねしょ癖が直らない。悩む平四郎に岡っ引きの政五郎親分はこう助言する。

「一人前と認めてあげれば、一人前になるものですよ」

 大人としての振る舞いを求めるなら、まず子ども扱いをやめるのが先決。子育ても後進育成も要諦は同じだ。

◆周囲に助けを求める

 裕福な商家に生まれ、不自由なく暮らしてきた弓之助。あるとき、貧しい小作人の暮らしにショックを受ける。無力感に苛まれる。そんな弓之助に平四郎はこう諭す。

「この世のことを、おめえ一人で全部背負いこむわけにはいかないんだよ」

 このセリフは新人はもちろん、フォローする先輩社員も救う。

 一人でできることには限りがある。だが、周囲の力を借りれば、解決の糸口も見つかりやすくなる。「窮鳥懐に入れば猟師も撃たず」ということわざではないが、思い切って懐に飛び込めば、打開策も見えてくるはずだ。

<文/島影真奈美>
- 【仕事に効く時代小説】『日暮らし』(宮部みゆき) -

<プロフィール>
しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。