「3Dバイオプリンター」でついにアレをつくる?12年後にはWiFI搭載の人工眼球が移植できるようになるかもしれない

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従来SFに出てくるサイボーグというのは”機械化された人間”というイメージだった。しかし、将来現実世界で生まれようとしているサイボーグは、ちょっとちがうものになるかもしれない。イタリアのデザインスタジオMHOXが、バイオテクノロジーで”製造”した高性能な眼球の市販化を目指しているのだ。

人工眼球で視覚性能を上げる

MHOXでは、近い将来、人間の臓器や身体の一部がバイオ技術によって人工的に製作できると考えている。そして、機能に問題を起こした部位に移植したり、あるいは性能を上げるために使うこともできるようになると考えているという。

なかでも注目しているのが眼球だ。視力を増強させたり、さらなる機能を付加したりすることができるのではないかと考えているようだ。

MHOXが考えている人工眼球のモデルは3タイプある。『EYE HEAL』、『EYE ENHANCE』、『EYE ADVANCE』と名づけられている。

『EYE HEAL』はもっとも標準的な機能を持ったモデルだ。これは病気や障害によって、失ったり低下したりした視力を取りもどすためのものだと考えていい。『EYE ENHANCE』はその名のとおり、視力を増強するモデルだ。”ハイパー網膜”によって解像度を1.5倍にアップできる。薬を飲むことで『ヴィンテージ』、『白黒』などと視覚信号にフィルターをかける機能も含んでいる。

そして最後の『EYE ADVANCE』は高機能モデルだ。WiFiを搭載していて、デジタルカメラやモバイルデバイスのように視覚を記録でき、シェアすることができるという機能を持たされている。

3Dバイオプリンターで製造する

この『EYE』システムを利用するには、最初は外科手術が必要になる。眼球と脳を接続する『Deck』をインストールするためだ。しかしそれ以降は、外科手術を必要とせずにユーザーが眼球を交換できるようにしたいという。ニーズに合わせて機能を使い分けたり、手軽に眼球をアップグレードできるようにするためだ。

いずれの『EYE』も3Dバイオプリントによって製造される。そのプリンターは、眼球に必要とされるさまざまな組織を作るために、異なるタイプの細胞を出力できる特殊なニードルを備えている。

細胞はバイオインクと呼ばれる特別な物質でできていて、プリンターはさまざまなタイプのバイオインクを切り替えて使うことができる。ニードルから出力された細胞は自動的にほかの細胞と結合するため、『EYE』自体は完全に有機的な組織となる。

じっさいのところ、どれほど現実的なプロジェクトなのかはよくわからない。しかし、MHOXでは、2027年の1月までにはこの人工眼球を市販化したいとしている。これから12年のあいだに実現すると思われる(実現するかもしれない?)イノベーションを前提にしたプロジェクトなのだろう。

本当にこんなことが可能なのか疑わしい面もあるが、少なくとも、正常な機能を持つ眼球の再生と移植などは、まったく荒唐無稽な話でもない。そこから先は倫理的な問題もあるだろう。このプロジェクトは、近い将来可能になる事態についての問題提起も含んでいる。

解像度が高く、記録もシェアもできる人工眼球。自分だったら移植するだろうか?

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【参考・画像】

※ EYE - MHOX