国際機関が発表「クリーン・ディーゼルは実際はクリーンではない」

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自動車全体でみるとまだごく限られたものとはいえ、日本でもここ数年でディーゼル自動車の販売台数が増加しているという。一方、この分野で先を行くヨーロッパでは、ここ20年の間にディーゼル車がメジャーなものに。総じてガソリンエンジンの自動車よりも高額だが、長らくディーゼル燃料がガソリンより安かったため人気になっている。

ひと昔前まではディーゼル車といえば黒い煙や大きな音を出しながら走行するイメージを持たれていたが、近年では優れた環境性能をもっていることが知られている。ヨーロッパやアメリカでは厳しい排気ガス規制をクリアした車だけが販売されるが、このほど国際クリーン交通委員会(ICCT)が発表したレポートによると、実際には基準値の7倍もの窒素酸化物(NOx)を排出していることが明らかになった。

室内でのテストと路上走行のデータに矛盾

市場の大きな需要によって、ヨーロッパのメーカーは先端的なディーゼル自動車技術で世界を引っ張っている。こうしたディーゼル化の流れは、CO2、NOxや粒子状物質(PM)といった大気汚染物質の排出規制値を定めたEUの規定導入にポジティブな影響を与え、1993年に導入された規定『EURO 1』以来、排出される有害物質は低減した。

最新の『EURO 6』では、特にNOxとPMの排出量の規制値が厳しくなっており、2015年1月1日からEUで販売される新車はすべてこの数値をクリアしなければならないのだ。ところで、これらの排出値は室内で自動車の路上走行状態を模擬する『シャシダイナモメータ』でテストされているという。このほど発表されたICCTのレポートによると、公表されている数値と実際の排出量には矛盾があること、すなわち実際の路上走行においてはメーカーの主張するほどには排出がコントロールされていないことが分かったという。

許容される80mg/1kmの7倍にあたるNOxが排出

報告では『EURO 6』の基準をクリアした12台と、アメリカの排出ガス規制『Tier2 Bin5』を認可された3台の計15台の新しいディーゼル車の排出パフォーマンスを調査。速度や道路状況、有害物質の排出など、搭載した車の様々なデータを測定する『Portable emissions measurement system(PEMS:車載排出ガス分析システム)』を用い、97回以上、計140時間におよぶ6,400kmの走行が測定された。

今回初めてディーゼル車の実走をシステマティックに分析した結果、COや全炭化水素(THC)は排出量が少なかった一方、NOxの排出量は、期待に反して『EURO 6』の規制値よりも増加していたことが分かった。『EURO 6』では1kmあたり80mgのNOx排出が許容されるが、実際には560mgという数値が示されたということだ。

このように基準と路上の走行では数値に矛盾があり、ディーゼル車はメーカーが主張するほどにはクリーンではないことが判明した形になった今回のレポート。今後は排出規制値を、PEMS試験で実際のドライバーと同等の条件下となる路上実走データに適用するといった対策が求められるだろう。

ディーゼル車でいえば、フォルクスワーゲンやアウディ、ボルボなどの各社がディーゼルのプラグインハイブリッドを開発している。いくつかの物質に関しては基準値をクリアし優れた環境性能を示しているディーゼル車だけに、今後のさらなるイノベーションに期待したい。

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【参考・画像】

※ REAL-WORLD EXHAUST EMISSIONS FROM MODERN DIESEL CARS - ICCT