『セッション』のデイミアン・チャゼル監督にインタビュー

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デイミアン・チャゼル監督。本年度のアカデミー賞で、助演男優賞・編集賞・録音賞の3冠に輝いた『セッション』(4月17日公開)を手がけ、その名を知らしめた風雲児だ。

【写真を見る】J・K・シモンズと堂々渡り合った新鋭若手俳優・マイルズ・テラーにも注目!/[c]2013 WHIPLASH, LLC. All Rights Reserved.

まずは自ら書いた脚本の一部を映像化した短編映画「Whiplash」が、サンダンス映画祭で脚光を浴びる。その追い風を受け、監督した本編が『セッション』だ。チャゼル監督にインタビューし、本作の製作秘話についてインタビューした。

最初に、アカデミー賞を受賞した感想から。「助演男優賞のJ・K・シモンズは、今回が初めてのノミネーションだったんだ。そういえば、僕らのチームで候補になった人全員が、オスカーバージンだった。初めてのアカデミー賞だったから、やっぱりワクワクしていたよ」。

「特に僕はJ・Kの大ファンだったから、受賞という最高の経験をさせてもらえて、うれしくて仕方がなかった。関わったスタッフ全員が誇らしく思ったし、実際に授賞式の夜は、本当にみんなぼーっとしていて、起きていることをただただ吸収しているだけだったよ」。

『セッション』の主人公は、偉大なジャズドラマーになるべく名門音楽学校に入学した19歳のアンドリュー (マイルズ・テラー)だ。彼は鬼教師・フレッチャー(J・K・シモンズ)から、かなり厳しい指導を受け、次第に追い詰められていく。

J・KのドSな鬼教師ぶりは圧巻で、まさにオスカーにふさわしい熱演だが、彼と対峙するマイルズ・テラーの演技やドラムの演奏も白眉だ。「元々、ドラムの経験があったマイルズだけど、ジャズはやったことがなかった。たとえば、伝統的なジャズでは、スティックの握り方なども違うので、そういったところから指導を始めたよ。

今回はただのジャズではなく、複雑な楽曲を演奏してもらわなければいけなかった。しかも登場した時は迷いのあるミュージシャンで、どんどん腕を上げていかなければいけない。難しい行程だったと思う。最終的に、彼の演奏はヤバいぐらい上手くなったよ!」。

ラスト9分19秒のシーンの衝撃には、思わず息を飲む。このシーンは、音楽を先に決め、絵コンテもすべて用意して撮影に臨んだ。「カメラワークや、細かいところをどう撮っていくかが全部自分のなかで見えていたんだ。撮った素材を見ながら、再編集していったものだけど、フレキシブルに作れたという点は良かったと思っている。3日間で撮ったけど、2日目にマイルズが(指を)出血し始めたんだ。すごいテンションが高かったし、色々な挑戦であったけれども、彼がワクワクしながら撮っていたので、すごく楽しくもあったよ」。

本作は、チャゼル監督の自伝に基づいた物語だという点にも驚く。とはいえ、内容は多少デフォルメしてあるそうだ。「実際に僕が師事した指揮者の方は、J・Kと同じぐらい怖かったけど、意地悪ではなかった。ある意味、素晴らしい教師であり、インスピレーションを与えてくれる方だ。指導する時、大声で叫んだりして、恐怖心を利用して指導するタイプの先生ではあったけど、フレッチャーみたいに一線を越えるようなことは一切しなかった」。

「でも、今回の映画で問いかけたいことは、そういうジレンマだった。素晴らしい演奏にするために、どこまでやって良いのかというジレンマに焦点を当てたかったから、強調するためにもっと怖いキャラクターにしたんだ。自分がその体験をした時、ちょっと萎縮したり、音楽をやること自体に恐怖を感じるようになってしまったりもしたので。そういった物語をいままで映画で見たことがなかったので、それをベースに映画を作ろうと思ったよ」。

『セッション』を撮り、過去の自分と向き合ったことで、何か心の変化などはあったのだろうか。「映画を作ってみて、すっきりするような、淘汰される感じになることを期待していたけれど、そうでもなかった。当時、よくその指揮者の方の悪夢を見ていたけど、いまだに彼が悪夢に登場するからね。ただ、自分の長編初監督作とされる物語が、すごくパーソナルでよく見知った世界であったことは、すごく助けになった。どういう映画を作りたいのかということが、自分の経験をベースにしているので最初からよく見えていたから、すごく作りやすかったよ」。

『セッション』の原題は、ムチ先のしなやかな部分を示す「Whiplash」。ただし本作のムチは、通常先生が学生に振るう愛のムチといった生やさしいものではなく、壮絶な仕打ちである。見終わった後、その意味の深さをかみしめると共に、ハリウッドの新しい才能にうなること請け合いだ。【取材・文/山崎伸子】