ユナイテッドの快勝に終わった32節のマンチェスターダービーを識者が斬る! (C) Getty Images

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田邊雅之:マンチェスターダービー、予想外の展開になりました。ユナイテッド、4-2でシティに勝利ですよ。
 
山中忍:『テレグラフ』などの高級紙から『ミラー』のようなタブロイドにいたるまで、翌日の新聞で一番使われていたのは「Demolition(完全崩壊)」という単語でしたね。
 
 でも個人的には実際のスコア以上に、チーム全体の出来や戦術のはまり方に開きがあった感じがします。あとはなんといっても、シティが気迫の面でもかなり見劣りしたのかなと。せっかくのダービーなのに。
 
田邊:同感ですね。もともとダービーというのは、リーグ戦の順位にかかわらず、勝手に地元で盛り上がるお祭りみたいなものじゃないですか。
 
 だからこそシティがグダグダで、1部と2部を行ったり来たりしている頃でも名勝負はあったし、逆にデニス・ロー(ユナイテッドのレジェンドで後年、シティに所属)が、現役最後のシュートをダービーマッチで決め、2部に落ちていくユナイテッドに引導を渡すようなドラマも起きた。でも今回はなんか醒めていたというか……。
 
山中:2位争いもかかっていたから、熱のこもったぶつかり合いを期待していたのに、ダービーらしさが感じられたのは前半の10分くらいまでで。
 
田邊:そこからはずるずる。せっかく先制したのに、すぐに追いつかれて逆転。おまけに追加点まで決められてしまう。ミルナーがドッカーンと吹かしていなければ、もしかしたら多少は展開が違っていたのかなとも思いますけど、シティの勝負弱さがまたもや露呈してしまった感じは否めない。
 
山中:僕が一番強く感じたのは、ああいう展開になったときのペレグリーニの求心力のなさだった。選手の受けは悪くないタイプだけど、頭の中が真っ白になった選手たちがベンチを見た時に安心感を与えたり、監督があんなに戦っているんだから、俺たちも頑張ろうと選手を奮い立たせられる存在にはなっていないだなあと。ファン・ハールとは好対照ですよね。
 
田邊:そう。人望はなくとも、自信と存在感だけはいつも120パーセントある(笑)。
 
山中:ファン・ハールだったら、試合に負けた後の会見でも、もう少し威厳を保てたと思うんですけどね。
 
田邊:ペレグリーニは、ちょっと痛々しいくらいだった。『ガーディアン』なんて、自分の将来――つまりはシティとの契約云々を話すことさえ拒否したと書いている。
 
山中:4位に落ちたことで、ますます雲行きが怪しくなった。逆にリバプールのロジャースは、棚ぼた式にCLに出場できる芽が出てきたということで俄然、威勢がよくなったけど、そもそもシティはシーズンの途中までは、チェルシーとマッチレースをしていたわけでしょ? 
 
 元旦の時点ではポイントから得点数までピタっと揃っていて、両チームの差はアルファベットの「C」と「M」の並び順だけだった(笑)。不調に陥った原因がはっきりしないだけに、余計に問題の根が深い感じがしますね。
 
田邊:個人的には、実はCLでまたもや敗退してしまったのが潜在的に影響を及ぼしているのかなという気がしていて。もちろん怪我だったり運不運、あるいは判定の問題はあるにしても、駒は一応揃っているわけだから、そう考えないと沈滞ムードの説明がつかない。
 
山中:それはあると思いますね。シティの主力選手は、プレミア制覇という目標を4年前に達成しているじゃないですか。それで今年こそはヨーロッパのタイトルだと思っているのに、結局、毎回のようにCLで負けてしまう。モチベーションを維持するのが大変になる。
 
田邊:萎えますよね。ヤヤ(トゥーレ)なんか、またもや古巣のバルサに恥をかかされてしまっている。勝利で恩返しをするどころじゃない。