4月特集 春競馬、クライマックス(10)

【皐月賞「3強」の勝算(3)ドゥラメンテ編】

 史上初めて、"無敗の弥生賞勝ち馬"と"無敗のスプリングS勝ち馬"2頭が顔を揃える今年の皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)。特に、"無敗のスプリングS勝ち馬"は過去9頭中6頭が皐月賞馬になっているというデータもあるが、あくまでもそれは過去のこと。歴史は常に塗り替えられるものであり、データに倣(なら)うことも大切だが、それに縛られすぎると視野を狭めてしまうこともある。

 "今年の皐月賞出走馬で一番の良血馬は?"と問われれば、多くの人がドゥラメンテ(牡3歳/父キングカメハメハ)の名を挙げるだろう。母アドマイヤグルーヴは2003、04年とGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を連覇し、祖母エアグルーヴは1996年GIオークス(東京・芝2400m)、1997年GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)を制し、年度代表馬にも輝いた名牝。3代母ダイナカールもオークス馬で、叔父叔母には香港GIを勝ったルーラーシップを筆頭に、フォゲッタブル(GIIステイヤーズS/中山・芝3600m)、グルヴェイグ(GIIIマーメイドS/阪神・芝2000m)と3頭の重賞勝ち馬の名が並ぶ。

 さらに牝系を遡(さかのぼ)ると、1968年に輸入された5代母パロクサイドに辿り着き、そこから発展した一族には2006年GI高松宮記念(中京・芝1200m)の勝ち馬オレハマッテルゼ、2002年GIマイルチャンピオンシップ(京都・芝1600m)の勝ち馬トウカイポイントなども出ている。まさしく、現在の日本を代表する名牝系と言っても良いだろう。

 しかし、これだけの名牝系でも、なぜか牡馬クラシックには縁がない。エアグルーヴの仔フォゲッタブルが2009年GI菊花賞(京都・芝3000m)で2着に入っているが、ルーラーシップも2010年、プリンシパルSを4馬身差で圧勝して臨んだGI日本ダービー(東京・芝2400m)ではエイシンフラッシュの5着に敗れている。

 そして、父のキングカメハメハも、牝馬では2010年の3冠馬アパパネを出してはいるが、牡馬のクラシックホースは出ていない。皐月賞で2014年にトゥザワールドが2着、日本ダービーでは2010年ローズキングダムが2着と、連対はしているが、勝ち切るには至っていないのだ。

 ドゥラメンテの兄姉は出走した4頭がすべて勝利を挙げ、全姉アドマイヤセプターは2012年GIII京阪杯(阪神・芝1200m)2着など短距離戦線で活躍し5勝を挙げたものの、「クラシックホースを」というこの血統に向けられた大きな期待には応えられずにいた。

 そんななか現れたのが、母の最後の産駒となるドゥラメンテであり、兄姉とはひと味違う素質の高さを見せつける。昨年11月の2戦目(11月8日/東京・芝1800m)を6馬身差で圧勝すると、約3カ月ぶりの出走となったセントポーリア賞(2月1日/東京・芝1800m)でも5馬身差の圧勝。一躍、クラシック候補の1頭に躍り出たのだ。

 続く共同通信杯(2月15日/東京・芝1800m)では、4戦連続で1番人気に推されながら、道中で折り合いを欠き、位置取りが悪くなってリアルスティールの2着に敗れてしまったが、この走りは「あれだけ折り合いを欠いてリズムを崩しての2着はすごい」と、改めてこの馬の強さを再確認させる内容だった。

 競馬は無敗で居続けることは困難であり、負けることによって課題が見えて、プラスに働くケースも多い。無敗の大本命馬ルージュバックが敗れ、5戦1勝のレッツゴードンキが勝った今年の桜花賞はまさにその典型的なレース。それをなぞれば、共同通信杯の敗戦は意味あるものだったと言えるだろう。

 そして、当初は賞金不足で出走不可能に思われた皐月賞も、賞金上位馬の回避で出走が叶い、鞍上にもミルコ・デムーロ騎手を確保。流れは完全にドゥラメンテに向いている。

 前述のように血統的なジンクスはあるが、競馬の歴史の中で、さまざまなジンクスが破られ、その常識はたびたび塗り替えられてきた。ドゥラメンテの持つジンクスなど、過去のそれらに比べれば小さいものだろう。ドゥラメンテが、父キングカメハメハの、そしてパロクサイド牝系の呪縛を解き、新たな歴史を作り出すことが出来るか、注目したい。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki