【漢字トリビア】「助」の成り立ち物語
「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「助」。今日の漢字は「助ける」、「援助」の「助(ジョ)」。
全国各地で開かれているお田植祭り。いにしえの人々が互いに助け合うことで成り立ってきた、稲作文化の象徴です。
「助ける」という字の向かって左側は、且(ショ)と呼ばれる文字で、農耕に使う道具のひとつ、鋤の形をかたどったもの。幅の広い刃に木の柄をつけて、土を掘り起こしながら、雑草を切るために使います。
右側の「力」もまた、鋤の形を表す農具をかたどった漢字で、こちらはおもに土を掘り起こして砕くものを表しています。このふたつの道具を並べた「助ける」という字は、道具を使って農作業を「たすける」という意味をもつ漢字になりました。のちに、農耕のことに限らず、協力して人を「たすける」という場合でも使うようになりました。
かつての稲作は、集落の人々すべての力を結集させたものでした。田を打ち、水を引き、代掻きをして稲の苗を植える。その後も草を取り除き、土の中に空気を送りこむ。必要なのは、こうした実際の作業に取り組む人だけではありません。
無事の収穫と豊作を祈る人、そのための知恵をしぼる人。夜を徹して水争いの番をする人や、作業後のねぎらいの宴を準備する人も必要です。幼い弟や妹の面倒を見る子どもたちが居て、休憩の時間を知らせようと元気に泣くのは赤子の役目。誰もがみな、もてる力を発揮します。なぜなら自然は作物を作る者たちを、待っていてはくれないからです。
ではここで、もう一度「助ける」という字を感じてみてください。
「助ける」という漢字には、ふたつの農具が並びます。それは、どちらか一方が力を貸すというのではなく、互いに力を発揮して助け合う、ということ。人は必ず誰かに助けられ、そして同時に、必ず誰かを助けています。からだを動かして働く、ということだけではありません。
心をひらく笑顔、悲しみを溶かす言葉、そして、ただ、そこに居る、というぬくもり。誰もがみな、この素晴らしい世界のなりたちを助けているのです。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。その想いを受けとって、感じてみたら・・・ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『読んでわかる俳句 日本の歳時記 夏』(小学館)
6月29日(土)の放送では「奥」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年6月22日(土)放送より)