全国5カ所でアコースティックの魅力を伝えてきた出演者たち

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元キマグレンのISEKIが総合プロデューサーを務めるヤマハアコースティックギターの祭典「Yamaha Acoustic Mind 2019」 が、11月3日に東京・品川インターシティホールにて開催された。ISEKIプロデュースとしては6回目の開催となる今年は、イベント名の通り、東京のみならず、名古屋、大阪、福岡、広島の5都市を巡り、各地にゆかりのあるゲストアーティストを迎え、地域に密着したスタイルで展開された。ここでは、最終公演となる東京・品川インターシティホールでの様子をお届けする。

会場ロビーでは、サイレントギターからボディが小さく設計されたアコースティックギター、イベント出演者の愛用ギターなど様々なギターを展示し、気軽に触れることができる体験会も実施。来場者が思い思いにギターに触れ、アコースティックギターの幅広い表現力や可能性を指先から耳まで存分に感じていた。



定刻になり会場が暗転すると、磯貝サイモンの軽快なピアノに合わせて出演者のAnlyと大石昌良、さらにイベントの総合プロデューサーISEKIら全員がステージに登場。ISEKIの「品川―!」の一言で、会場からは歓声と拍手が起こり、ISEKIの楽曲「Workman」を4人で演奏。アコースティックギターとピアノのマイルドなサウンドの上に、4人の歌声が伸び伸びと広がっていく。曲が終わると、ISEKI一人のみがステージに残り、「今日はゆっくりと、このヤマハギターの音を楽しんでいってください、よろしく」と語ると自身の楽曲「PROMISE」を披露。アルペジオが印象的な曲のため、ヤマハのギターLL36の魅力である低音から高音のバランス良さが綺麗に鳴り響いて聞こえ、情熱的な力強さをリアルに表現できるギターだと痛感するとともに、彼のアコースティックマインドを感じ取ることができた。 



続いて磯貝サイモンが登壇。4歳の頃からヤマハ音楽教室に通い、自身のギターもピアノもヤマハ製を使用しているという大のヤマハファンである磯貝。「ハートマーク」とTikTokで多く使用され話題になっている「CRAZY FOR YOU」の2曲を披露した。ふくよかなギターサウンドを体現できるモデルLJ36を使用しているためか、力強くギターをかき鳴らしてもアルペジオを弾いてみても、まろやかなサウンドになっている。加えて、会場の屋根の高さが一層アコースティックサウンドの音の広がり方を魅力的にしており、ホール会場全体を包み込む優しさのあるサウンドとなっていた。ISEKIとの2人でのセッションも始まり、未発表曲「暗闇にセイハロー」と「ようこそジャパリパークへ」も1コーラス演奏した。



その後はAnlyがステージに登場。Anlyのライブパフォーマンスでは、本人の伸びのある歌唱力はもちろんのこと、今年の夏に発売された最新モデル「STORIA」のキレがあり、鳴りの良さが際立つサウンドを響かせた。楽曲「Venus」では、ルーパーのエフェクターを多用し、ギターフレーズや自身の歌声、更にスラム奏法でボディを叩いたパーカッションを重ねて、一人で多重サウンドを体現して見せた。デジタルサウンドや技術が音楽業界でも主流になっている中で、楽器そのものの音を活かすアコースティックに上手くデジタル要素を取り入れた演奏が、アコースティックのステージングに伴う制約を取り払い、可能性を広げていく近代性も感じられた。



続いてのセッションシーンでは、Anlyと磯貝、ISEKIの3人で「Parade」を、更に大石も呼んで4人でキマグレンの名曲「LIFE」を演奏する。ここまでのステージでギターの紹介や各々のプレイを見てきたことで、アコースティックという楽器の個体差やプレイの多様さに注目して聴き込んでしまう。情熱的なアルペジオとかき鳴らすバッキングのISEKI、まとまったテクニックとまろやかさを押し出したプレイの磯崎サイモン、近代的な技法も取り入れてアコースティックの可能性を感じさせるAnly、そして変則的で指板上を自在に動き回る大石昌良、イベントタイトル通りのそれぞれのアコースティックマインドがぶつかり合う姿に筆者は心を打たれた。会場からも手拍子と歓声が止まらなかった。

その後は大石昌良がステージに残る。「大石昌良の弾き語りエンターテイメントの幕開けでーす!」の一言と共に一曲目の「ピエロ」で演奏がスタート。大石1人のステージでバンドメンバーがいる体でトランペットの音色を再現したり、スキャットを披露したりと、正にエンターテインメントで会場を楽しませる。ギタープレイも、スラップ奏法などアコギでできるテクニックを総動員して、1本のギターからベース、ドラム、ギター全てのサウンドとリズムを鳴らしてみせる1人アンサンブルのテクニックの高さが際立った。「眼鏡ダーリン」ではメガネを掛けた客の中から1人をステージに呼び、掛け合いをしながらメガネを掛けてもらうというお馴染みの場面で笑いも誘うなど盛り上がり続け、手拍子が止まないパフォーマンスとなった。歌声にエフェクトを掛けながら、アコースティックギターをかき鳴らす不思議なマッチ感の楽曲「ボーダーライン」や、亡き祖父との思い出に心を込めて歌ったバラード「またこいよ」など表現の魅力に富んだパフォーマンスは、正にアコースティックギターでのエンターテインメントと呼ぶにふさわしい内容だった。

アンコールでは、ISEKIと大石の2人が先に登場。「カバー曲やります。皆さんもご存知の曲かと思います」と話すと、槇原敬之の「どんなときも。」を披露。本公演で数々のアコースティック精神とプレイを耳にしてきたが、その中でも弾き語りとは、アコースティックギターという楽器で表現できる最も大きな魅力の一つではないか? と痛感してしまうような演奏で、会場からは惜しみない拍手が送られた。そして、磯貝とAnly、更にスペシャルゲストとして事前に公募で集まった13人の客がステージに登場。中には12歳のギタリストまでおり、老若男女問わずのメンバーで、大石昌良作詞・作曲のアニメ主題歌「ようこそジャパリパークへ」を、一緒に演奏。会場も皆立ち上がり、大盛り上がりのフィナーレを飾った。



今回の公演では、実際にアコースティックギターに触れ、学び、それぞれ演奏スタイルが異なる4人のアーティストのアコースティックマインドを聴くことができるという、正に豪華なアコースティックの祭典となった。どれほど音楽技術や機材のデジタル化が進んできていても、アコースティックというサウンドに魅了される人々が絶えない理由が垣間見える、そんな貴重なイベントであった。

<イベント情報>

「Yamaha Acoustic Mind 2019 ~Circuit~」

2019年11月3日(日・祝日)東京・品川インターシティホール
出演アーティスト:ISEKI、大石昌良、磯貝サイモン
ゲストアーティスト:Anly
主催:株式会社ヤマハミュージックジャパン

=セットリスト=
1. Workman(出演者全員)
2. プロミス(ISEKI)
ー(磯貝サイモン)ー
3. ハートマーク
4. CRAZY FOR YOU
5. 暗闇にセイハロー(w ISEKI)
6. ようこそジャパリパークへ(1コーラスのみ、w ISEKI)
ーAnlyー
7.この闇を照らす光のむこうに
8. エトランゼ
9. Venus
ーセッションー
10. Parade(w ISEKI・磯貝)
12. LIFE(全員)
ー大石昌良ー
13. ピエロ
14. パラレルワールド
15. ボーダーライン
16. 眼鏡ダーリン
17. トライアングル
18. またこいよ
 
EN1. どんなときも。(大石・ISEKI)
EN2.ようこそジャパリパークへ(出演者全員)