通販サイトでは、さまざまな化学物質が販売されている

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   島根県の大学で、中国人の元研究員が、インターネットで核燃料物質を不正に入手していたとして、文科省から厳重注意を受けた。販売していたサイトがどれだか特定できなかったが、「金属ウラン」などが売られているサイトはすぐに見つかった。

   事件の経緯はこうだ。島根大学総合理工学部で地質学を研究していた中国人の研究員が05年9月、研究用に核燃料物質をインターネットで米国の業者に注文した。注文した品物が届かないまま、この研究員は05年11月に帰国してしまい、品物が大学に届いたのは06年6月8日だった。

岩石の年代測定の基準にするために注文された

   原子炉等規制法では、半年ごとに核燃料物質の「取得報告書」の提出を義務づけているが、7月末にこれを作成するために文科省と打ち合わせを行っていたところ、「当該物質(編注: 核燃料物質)を海外から直接購入することは認められない」との指摘を受けた。同大学は、原子炉等規制法で、研究用に少量(300グラム以下)を所持・使用することは認められているが、購入は国内の指定業者からしかできないことになっていた。これを受けて、文科省は島根大を「厳重注意」とした。

   今回問題になった「核燃料物質」は、酸化ウラン2.6グラム、金属ウラン0.128グラムと酸化トリウム0.068グラム。島根大がJ-CASTニュースの取材に対して明らかにしたところによると、この物質は、岩石の年代測定の基準にするための標本として注文されたという。島根大は、この研究員が具体的にどこのウェブサイトに注文したかは明らかにしなかったが、J-CASTニュースでは、ウランなどを販売している通販サイトにアクセスしてみた。一体、どんなものを売っているのだろうか。

   今回アクセスしてみたのは、「United Nuclear」というサイト。「科学に『楽しさ』をもう一度」という理念を掲げて、理科用具を販売している。

「金属ウラン」は9グラムで55ドル

   このサイトのトップページの「Chemicals & Metals(化学物質と金属)」という項目をクリックすると、「ベリリウム」「カルシウム」「水銀」など、中学校で習う周期表に書いてある物質の名前がズラリ。ページの構成自体は、よくある医薬品の通販サイトと、あまり変わらない。もちろん商品の写真も掲載されており、物質によって形状もさまざまだ。その中に、今回問題視された物質のひとつである「金属ウラン」もあった。「現在売り切れ中」との表示があるが、価格は9グラムで55ドル(約6,400円)だそうだ。これを、今回の島根大学の研究員が取得した0.128グラムに換算すると、わずか91円だ。

   ちなみにこのサイトでは、「私たちが売っているものの中で免許が必要なものはありませんし、私たちが売っているものを米国で買うことは合法です」との告知文があるが、米国外の発送はしていないそうだ。その理由としては、手続きの煩雑さや、税関で没収されてしまうことなどを挙げ、「受け取れないものに対してお金を払うのは、普通は、あまり嬉しくないものです」としている。

   ある科学ジャーナリストは、今回の騒動で登場した物質について、

「この種類のものであれば、ちょっと大きい大学であれば、どこにでもあるもの。安全性については、密閉されていれば、この量であれば、すぐに危険とは言えない」

   と話す。このように、今回は特に危険ではなかったようだが、核燃料物質といっても購入はそれほど難しくはない。さらに、「今回の騒動で登場した程度の量では危険ではない」ということであって、ウェブサイトで大量に購入してしまえば、危険が及ぶ可能性も十分ある。