残念ながら、通常は一般人は上陸できない

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   クリント・イーストウッド監督のハリウッド映画で10月に公開された「父親たちの星条旗」と現在公開中の「硫黄島からの手紙」で舞台となった「硫黄島」を観光したいという問い合わせが小笠原観光協会などに相次いで寄せられている。

   かつての太平洋戦争の激戦地・硫黄島は現在、海上自衛隊が管理する航空基地や米軍の訓練施設があり、一般の立ち入り・居住は禁止されている。一般の人が"上陸"を許されるのは年1回、小笠原村が毎年行っている墓参事業のときだけ。しかし、それも基本的には硫黄島の旧島民であることが条件になっている。

旧島民でさえ上陸できるのは年1回

   小笠原村では、「島にお墓や土地などがある人と硫黄島の戦没者のご遺族で組織されている『硫黄島協会』の方に枠があるだけです。防衛庁の協力がいるので、旧島民でさえ(上陸できるのは)年1回なんです」(総務課)と状況を説明する。

   そんな硫黄島について小笠原観光協会は、「以前から年間数件といった問い合わせはありました。この2カ月で直接お問い合わせいただいたのは3件です」と、J-CASTニュースの取材に答えた。小笠原村への問い合わせも「何件かある程度」(総務課)という。
   にもかかわらず、「にわか硫黄島ブームが起きている」と報じたのは2006年12月19日付の夕刊フジ。 "殺到"の報道とは少々はなれた印象だが、「いやー、ウェブサイトのカウンターは上がりっぱなしですよ。他の旅行社からも問い合わせがあるほどです」――と悲鳴を上げているところがあった。

   硫黄島への上陸は無理だが、周遊することはできる。「南硫黄島硫黄島、北硫黄島の3島周遊クルージング・ツアー」を組んでいるナショナルランド(企画: 小笠原海運)には1日約900件ものアクセスがある。電話での問い合わせも10件ほど寄せられているという。

問い合わせが多いのでサイトを改変

   同社によると、「小笠原観光へのクリック数は1日約300ほどでした。それが硫黄島だけで900件ですからね。ツアーは毎年夏なので、電話やメールの問い合わせがこの時期にあることはほとんどありませんでした。あんまり問い合わせが多いので先週(12月12日)からサイトを休止し、小笠原(父島・母島)観光と分けてしまいました」と、とまどいを隠せない。

   03年から始まったこのツアーは、そもそもはバードウオッチングを楽しむ人が集まっていたが、それが映画やテレビドラマの舞台になったことで突然、脚光を浴びることになった。
   小笠原観光協会の話では「周遊ツアーの参加者も、硫黄島(中硫黄島)を廻るときには黙祷を捧げています」という。
   いまも昔も日米の軍事拠点である硫黄島。戦死者2万人の遺骨収集が進まず「島全体が墓地」であることを、12月20日付の夕刊フジが続報として伝えている。