4日、シンポジウム「人道支援と企業のCSR」で基調講演するアントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官(撮影:佐谷恭)

写真拡大

元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官の来日を記念したシンポジウム「人道支援と企業のCSR」(ジャパン・プラットフォームなど主催)が4日、東京・渋谷のUNハウス(国連大学ビル)で開かれた。

 基調講演でグテーレス氏は、国連や国家だけが世の中を動かす時代ではないと前置きし、国際協力分野での民間企業などの活躍に期待感を示した。また、自らが担う難民問題について「難民はよりよい住みかを求めて移動すると思っている人もいるが、そうではない。難民は故郷に帰還したいのだ」などと話し、国際問題に関する企業の正しい理解と、それに基づく支援を求めた。

 シンポジウムでは企業の担当者らが発言。企業の成長に伴って地域や世界への貢献を考えたり、「できることをしたい」という顧客からの要望に応えるために、経営資源を社会貢献に有効利用する事例が紹介された。ユニクロ執行役員の新田幸弘CSRチーム部長は、「製造拠点や店舗を世界展開しているので、被災地などに必要なときに必要なものを提供できる」と、“グローバル企業としての強み”を話した。難民救済への貢献を称えるナンセン賞を、今年7月に日本人として初めて受賞した富士メガネの金井昭雄会長は「国連機関やNGOからミッションに必要な手続きやニーズに関する情報などをもらって初めて、ヒト、モノ、カネの支援を活かすことができる」と、連携の重要性について語った。

 一方で、企業が行う支援活動が現地のニーズに合っているかや、アプローチしてくるNGOが信頼できるかなどについて不安が残るという意見も。国際緊急援助におけるNGO、経済界、政府の連携組織であるジャパン・プラットフォームなどの調整が役立ったとの声もあったが、支援に必要な情報が適切に伝わるかどうかが、今後の企業CSRが活発になるかを左右しそうだ。

 また、“無償”“使命感”だけでは、企業の利益追求と矛盾する。大和証券グループ本社の金田晃一CSR室次長は「マーケットベースでの人道支援も考えていく必要がある。“搾取”と誤解されないために、(企業活動の)情報開示とコミュニケーションが重要となる」とし、市場を通じた課題の解決能力がCSRのあり方を変えうるとの考えを述べた。【了】

■関連記事
ターナー氏、“持てる国”を批判(10/25)
「援助を実行、そして見せる」(9/4)
人道支援から平和を考える(8/16−18)