まちづくりを「一生の仕事」と言い切るJAMの西本さん(撮影:久保田真理)

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女性の就業希望者は360万人。うち、子育て期間にあたる25歳から54歳までの女性は245万人に達する(2006年男女共同参画白書)。一方、結婚、出産を理由にいったん退職すると、再就職が難しいのが現状だ。その原因として「子育てとの両立が不安」「年齢制限がある」「条件の不一致」などが挙げられ、働く意欲があってもあきらめてしまうケースが少なくない。ただ、そんな厳しい現実の中でも、自分の力で自分の道を切り開く、たくましい女性たちもいる。年齢も職業も違う20−50代の女性に、それぞれの生き方を聞いた。

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 大きな瞳がクリクリと動き、豊かな表情を感じさせる顔付き。薄手で風に揺れる白いワンピースが彼女の若々しさを感じさせる。大学を卒業したばかりの23歳、見た目には「普通の女の子」の西本千尋さんだが、地域や商店街の活性化を目指す「まちづくり事業」の若手ホープとして、最近注目を集めている。

 西本さんが社長を務める「ジャパンエリアマネジメント(JAM)」が、コンサルティングを行う対象は、売り上げ減少や後継者不足に悩む商店街。50代が「若手」と呼ばれるのが商店街の世界だ。

 「ねえちゃん、何考えてんの? 電話してから来い」。活性化に必要なマネジメントの説明をしたいと飛び込み営業をかけても、すげなくあしらわれることも多い。それでも、「私は若いので信頼関係を作るのが難しい。どれだけいい時間をともにできるか、人とのコミュニケーションが楽しい」と仕事の醍醐味(だいごみ)を目を輝かせながら語る。

 まちづくりに興味を持ったきっかけは、「“小江戸”川越で育ったことが大きい」と言う。故郷が地域を挙げて「まちづくり」をする環境に育った。そんな「まち」を当たり前のものとして育った彼女だが、大学時代に47都道府県を鈍行列車で“行脚”して出会った風景に衝撃を受ける。「地域の駅前で、消費者金融とコンビニばかりの光景が目の前に広がっていた。これをなんとかしたい」――その衝撃が起業への原動力となった。

 大学を卒業して就職を考えなかったわけではない。それでも「研究ではない『まちづくり』に関わりたかった」と自らの道を切り開いた。

 「まち」という閉鎖的なコミュニティーに切り込む技は、「商店街役員のたったひとりを口説き落とすこと」だという。「意思決定機関に関わる人が1人でも根本的な問題に気づいていれば、思いをぶつける。その人が理事会などの意思決定機関で戦うための“武器”を、一緒に作り上げていく過程がドラマチック」とこの仕事に惚(ほ)れ込んでいる理由を語ってくれた。

 自ら歩く道のりが長く険しいことは覚悟している。それでも「自分が関わった商店街に人があふれている様子をこの目で見たい」というのが夢。しかし、その夢がかなうには20年から30年かかるのだと笑う。「一生の仕事」と言い切るだけあり、まちづくりにかける思いは誰にも負けない自負がある。

 「若手の女性起業家と呼ばれることには、抵抗がある。若いからできる、なんて思われるのはイヤ。女性がやってるから収益が上がらなくてもいいだろう、事業がうまくいかなくてもいいだろうと思われるのも、自分がそれで甘えてしまうのもイヤです。その殻をやぶりたいと必死にもがいている途中です」――。負けず嫌いも人一倍だ。

 休日は、仕事から逃げるように映画館に駆け込む。最近は“イケメン”俳優出演の映画に「癒された」。「シャットアウトされた映画館で、2時間半だけは仕事のことを忘れられるから」と、勝ち気な表情が一瞬和らいだ。(つづく

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