クレディ・スイスからの巨額融資

── (質問者が市川宏検察官に代わる)あなたは弁護士からの質問に対して、エバートン、フリーマントルのベネフィシャリー・オーナーになっていることは知らないと言っていた。サインをしないと、オーナーになることはないと思うが。

 おそらくサインはしたんじゃないですかね。でも、そうした説明は一切受けていない。(ライブドアファイナンス元社長の)中村(長也)さんは書類を持ってくる時、彼は「いつものやつです」としか言わない。

── どういう書類か分からないでサインをしたのか。

 エバートンってクレディ・スイスのですよね。クレディ・スイスの口座開設に必要だから、サインをした。単純にクレディ・スイスのLDの口座開設に私のサインが必要だろうと。保釈後にエバートンとか、フリーマントルと聞いた。僕の想像ですけど、中村さんがクレディ・スイスの関係でサインしてほしいと書類を持ってきたことがあったので、それのことじゃないかと思っていた。
── 中身も見ないでサインをするのはいいかげんだと思うが。

 いやいや、いいかげんじゃないですよ。英語の紙がブワーっとある資料を、僕が読めると思いますか。そのためにリーガルチェックがあるんですから。

── LDの預金88億円が担保になることだと分かっていたら、OKしたか。

 僕は中村さんに頼まれてサインをしたことがあるが、それが僕のサインなのか分からない。偽造かもしれないし。もし、僕がババッと英文の書類を見て88億円がLDから出て行く話だと分かったら、「どうなの」と聞く。

── あなたは細かい経費にも細かいということだったが、大きな経費についてはどうだったのか。

 細かい経費“にも”ではない。僕が細かかったのは、ポールペンとかの細かい経費。大きな経費については、うるさいとは言えない。

── 英文の契約書が分からなければ、中村さんや誰かに聞かないのか。

 英文の書類については、僕はチェックする能力がない。リーガルチェックや会計士によるチェックは、基本的に書類が僕のところに来る前に終わっているから。

── 04−05年に小谷彰彦さんやクレディの関係者に会ったことはあるか。

 この前の法廷で小谷さんを見て、「この人が小谷さんだったんだ」と思った。会ったのは一、二度だと思う。

── 小谷さんの証言によると、04年10月末に六本木ヒルズ38階のLDの会議室で行われたミーティングで、あなたと宮内さん、白井さん、Eさんがいたということだが。

 ミーティングって話すことですよね。話し合った記憶がないし。それが10月だったのかも分からない。

── Eさんに会った記憶はあるか。

 外国人に会った記憶はある。

── ケンドリスの人だったという記憶はあるか。

 ケンドリスのことは、釈放されてから聞いた。

── ケンドリス、エバートン、ドクターハウリ、フリーマントルの話は、ミーティングに出てきたか。

 外国人に会った記憶はあるが、それがEさんなのか分からない。フリーマントルとかドクターハウリといった変な名前は記憶にない。

── そこで契約書にサインする時に、小谷さんはあなたが「日本語だっけ、英語だっけ」とたずねたと証言していた。何の契約書だったか覚えているか。

 何の契約書だか、分からないんですよ。社内から上がってくる契約書には信頼してサインしていたが。

「やりきるしかない」問答

── (質問者が藤野検察官に交代する)あなたは「100億稼ぐ仕事術」という本の中で、「秘密兵器はメーリングリスト」と書いていますよね。

 実物を見せてもらえますか。いっぱい書いているので、どれのことだか思い出せない。見出しは自分では付けずに、基本的に編集者が考えている。「仕事術」あたりは、自分でパチパチとワープロを打っていたが、「超メール術」(100億稼ぐ超メール術 1日5000通メールを処理する私のデジタル仕事術)あたりになってくると、口述筆記だった。「何とかの秘密兵器」みたいな言い回しは、編集者が考えたと思う。しかし、この本には編集者の意向がだいぶ入っている。メーリングリストが重要ということでは異論はないが、多分に脚色されている。

── 「メーリングリストを活用できない人は、仕事もできない」というのは。

 それはちょっと言い過ぎですね。

── メーリングリストが重要というなら、メーリングリスト宛てのメールは放置していないのか。

 別に放置していないと思いますけど。

── (架空売り上げの計上について、堀江被告が「やるしかないだろう、やりきるしかないよね」と発言したとの検察側の指摘を念頭に)これまでの尋問で、あなたは「やりきる」という言葉は使わないと証言していたが。

 とっさの話し言葉では使わないという主旨で言ったと思う。文字表現になった時は、その限りではない。

── そのように(証言内容を)修正するのか。

 まったく修正していない。

── 04年6月25日のあなたのブログ「ライブドア証券誕生」には、「その後、新生ライブドア証券の役員会。いろいろ大変だと思うが、やりきるしかない」とある。

 他に「やりきるしかない」とありましたか。

── 「やりきるしかない」って使うんですね。

 ブログみたいにじっくり時間をかけて文章を推敲(すいこう)して考える場合には、適切な表現を考えることはある。とっさの時には、熟語を使ってしまう。

── あなたのブログって、堅苦しくないですね。

 そう言えなくもないですね。

【了】

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