「クー」が冬眠する予定の冬眠ブース。(提供:上野動物園)

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動物園でクマを冬眠させ、展示するという世界的にも珍しい試みが11月下旬から、東京都台東区の恩賜上野動物園(小宮輝之園長)「クマたちの丘」で行われる。冬眠させるのは、2005年に新潟県朝日村で保護された双子のクマの1頭で、体重約50キロ、推定年齢1歳8カ月のメスのニホンツキノワグマ「クー」。

 このプロジェクトで用意されたのは、人工的に「冬」を作り出す冬眠準備室や冬眠穴をイメージして作った冬眠ブースなど3室。現在、動物園ではエサの量を増やして「クー」の体重を上げている。11月下旬から室温を徐々に下げると同時にエサの量を減らし、12月上旬には絶食状態にさせて、室温5度前後に設定したブースで冬眠を促す。

 同園の担当職員は「冬眠に導くことが大切な以上に、準備段階から冬眠から覚めるまで、『クー』の健康管理に注意を怠ることはできません」と話す。「クー」の冬眠中は、心拍数や呼吸数を確認しながら観察を続けていくという。

 「生態展示」として期待されるこの取組みは、自然生態に近い環境での飼育を目指し、来園者にも動物本来の姿を見てもらおうというもの。現在話題になっている北海道旭川市の旭山動物園(小菅正夫園長)の動物の行動や能力を見せる「行動展示」もその「生態展示」の一つ。上野動物園では、観客通路に設置された覗き窓とモニターから来園者が冬眠中の「クー」の寝顔と様子を観察することができる。【了】