1日、広島市内で講演するチベット亡命政府の最高指導者のダライ・ラマ14世(撮影:吉川忠行)

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ノーベル平和賞受賞者3人が集う「広島国際平和会議2006」(同会議実行委員会主催)が1日、広島市中区のアステールプラザで始まった。チベット亡命政府の最高指導者のダライ・ラマ14世(1989年受賞)などノーベル平和賞を受賞した"平和の巨匠"をひと目見ようと、約1000人の聴衆が集まった。

 ラマ師のほか、南アフリカでアパルトヘイト撤廃のために立ち上がったデズモンド・ツツ大主教(1984年受賞)と、北アイルランドで紛争のために巻き添えになった子供たちを見て立ち上がったベティ・ウィリアムズ氏(1976年受賞)が来日、広島市で一堂に会する形となった。「この世の中からすべての苦しみをゼロにしたい」という思いから、世界最初の原爆被爆国となった広島市のNGOや青年会議所が中心となって同会議を企画したものだ。

 ラマ師は基調講演で、人間だけが持つ"知性"を取り上げ、「敵という概念を作り、その敵に対するものとしての暴力が合法的に認められているがために、何千人を殺しても許される悲惨な状況がある。知性が備わっているが故に、私たちは愚行を繰り返してきた」と、人類が互いに敵対する状況を嘆いた。また、個人の幸せは社会に依存していると主張。人口増加や経済のグローバル化で世界を1つの家族と捉えなおす必要性を訴えるとともに、すべての人に思いやりを持つ大切さを強調した。

 ツツ大主教は、ラマ師が苦しい亡命生活を余儀なくされながらも、怒りや苦しみを表現しないことを称え、「本来一緒にいるべき人が分け隔てられていることが問題。ともにあってこそ、自由であり、幸福であり、人間らしくなれる」と述べた。またウィリアムズ氏は、「アメリカの同時多発テロで3000人が亡くなったことは悲しむべきだが、同じ日に貧困などで4万人の子どもが亡くなったことについて話す人はいない。食べ物がなくて苦しんでいる人を抱える国が、武器を増やしている」と語り、来場者に自分の足元だけでなく世界に目を向けて欲しいと話した。

 同会議は、2日まで。【了】

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