都内のマンション群。ここでもフリーレントは導入されているのか

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   アパート、マンションを一定期間タダで借りられる「フリーレント」物件が2006年に入って首都圏で急速に増えている。中には、なんと、入居から半年間の家賃無料という物件もあるそうだ。東京・新宿に本社を持つ賃貸物件仲介会社では「現在扱っている物件の20%がこのフリーレント」と話す。土地の値段は上がっているのに、なぜこんなことになっているのか。

   「フリーレント」というのは、「賃料無料」という意味だ。もともとはアメリカの制度だが、日本では、首都圏のオフィスビルの新築ラッシュと不況のあおりを受け、テナントがなかなか埋まらない90年代後半に始まった。ビルのオーナーが苦肉の策で打ち出したサービスだった。

扱い物件の約20%がフリーレント物件

   景気が良くなってオフィスビルの需要は伸び、賃料も上昇したが、賃貸アパート、マンションは供給過多が続き、「フリーレント」が2年ほど前からアパート、マンションへと導入された。

   ネットで不動産会社のホームページを見ると、多くがこの「フリーレント」物件のコーナーを設けている。
   アパマンショップホールディングスJ-CASTニュースの取材に対し、

「フリーレントは増えています。借り手有利の状況下で注目されてきた制度なんです。特に夏場は物件が動かないため、多くの物件がフリーレントで出てきます。うちで扱っているのは1ヶ月〜2ヶ月タダというのものが中心です」

と答えた。

   東京・新宿に本社を持つ仲介のア・ライズエステートでは、1年前ではフリーレント物件はほとんど無かったが、現在は扱い物件の約20%を占めるまでになった。「礼金、敷金がゼロで、さらに1ヶ月分の家賃がタダだったり、敷金を納めると2ヶ月分がタダなど色んな物件があります」とJ-CASTニュースに話した。空き部屋に入居者を入れるため、「フリーレント」を導入するマンションのオーナーが今年に入り急速に増えてきたのだという。

「入居後1年間は解約不可」といった条項がつく

   それは、

「お客様にこの制度を説明すると『お得だね』と強い関心を示してもらえますし、入居者がすぐに決まったりします。それだけにオーナー様の注目度が高くなっているのでしょう。ただし、物件にもよりますが…」

   不動産経済研究所の福田秋生企画調査部長は、フリーレントが出てきた背景を、オーナー側の思惑からこう説明する。

「賃貸住宅の供給過剰感が現在でも続いていて、オフィスビルのシステムを賃貸住宅でも使えるのでは、と導入されてきました。実は、オーナー側としては、入居者を確保するだけが目的ではないんです。賃料を下げない(現状維持する) 目的もあります。そして将来の売却にも備えることができるのです」

   仮に新規入居者の賃貸料が現在の入居者より安ければ、クレームが来て、全体の賃料を下げなければならない。それでは困るので、新規入居者には何ヶ月かをフリーレントにし、形の上で賃料の現状維持を図る、というわけだ。また、将来、賃貸住宅を売る場合、設定している賃貸料が高いほど高く売れる。大家はそういうことも考えて、フリーレントを入れていると福田部長は指摘する。

   ただ、フリーレントの契約には「入居後1年間は解約できない」という条項がついていることもある。フリーレントが増えていく中で、消費者には賢い判断が求められるということだ。