“予想外”のプランを発表してMNPに殴り込みをかけたソフトバンクの孫正義社長(撮影:佐谷恭)

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番号を変えずに携帯電話の契約事業者(キャリア)を変更できるサービス「番号ポータビリティ(MNP)」が24日、始まった。“静かな船出”と予想された同サービスだが、ソフトバンクの孫正義社長が土壇場で“予想外”の殴りこみをかけ、盛り上げに躍起になっている。

 携帯端末の秋冬商戦は異常な加熱ぶりで、各社の新商品説明会では、auが12機種、ソフトバンクモバイルが13機種、ドコモが14機種を発表した。一方で、インターネットリサーチのインフォプラントなどが実施した調査では、MNP利用の意向を示した人は1割にも満たなかった。ドコモやauの担当者は「MNPは開始日だけでなく、ずっと続く」と、MNP勝負が“長期戦”になる見通しを示していた。

 23日夜、突然報道陣に招集をかけたソフトバンクの孫正義社長は、都内のホテルで満面の笑みでこう語った。「どこの社のどのプランが一番安いか、そういう議論はもう終わり」――。1カ月以上、最高幹部以外は極秘にしていたという奇策は、他社のどのプランでも引き継ぎ、さらに200円引きにするという究極の対抗プラン。さらに、通話料やメール代などを条件付きで無料にする“予想外割”のゴールドプランも発表した。「家族割引や継続割引が途切れるのを嫌って、ユーザーの90%が移行しないという予測がある」と認めた孫社長は、すべての割引を引き継ぐという「最も分かりやすいやり方」(同社長)で、携帯電話料金の価格破壊を断行した。

 24日午前に都内で開かれたMNP開始のセレモニーでは、ソフトバンク以外の2社は“予想外”プランに静観の構えを見せた。ソフトバンクのように対抗策を一夜で出せない社内事情もあるだろうが、「顧客数」で圧倒的なドコモも、「顧客満足度」を誇るauも、ユーザーは料金だけで判断することはないと読んでいるようだ。

 一方、“予想外”を発表したソフトバンクには、インパクトだけでなく、課題も残る。「第3世代(3G)の利用者が少ないからできた」と、孫社長は現在の劣勢を逆手に取っているが、加入者の増加をどの程度想定しているか明らかではない。また、「つながりやすさ」の向上のためとして、来年3月末までに基地局数を4万6000まで増やすとしながらも、その具体的手段には触れていない。さらに、“想定外割”の基本料金が70%オフになる期限は今のところ1月15日までで、基地局が予定通りに増えるとしても、加入者増のピークには間に合わないという懸念もある。

 “予想外”は、誰にとって“予想外”となるのだろうか。CMキャラクターに“予想GUY”を起用するのもいいが、ユーザーが“予想買い”して“予想害”は想定外…。【了】

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