安倍晋三首相は18日、民主党の小沢一郎代表と国会で首相就任後初めての党首討論会に臨み、憲法改正問題と北朝鮮による核実験を巡る政府の対応について議論を戦わせた。

 同日午後3時から衆参合同の国家政策基本委員会(衛藤征士郎委員長)で始まった討論会の冒頭、小沢代表は「先輩として尊敬していた」という故安倍晋太郎氏について触れ、元外相の息子である晋三氏の首相就任を祝い、「政治は国民のためにあるという原点を肝に銘じながら、職務に対応して頂きたい」とエールを送った。これに対し、首相は「父も小沢さんと私が与野党の党首として論戦を戦わせるとは想像していなかったのではないか」と述べ、議場の笑いを誘った。

 憲法改正問題で、小沢代表は欧州諸国の憲法改正に関する規定を紹介し、大戦後の占領中に制定された現行憲法は「無効ではないのか」として、首相の認識を問うた。首相は、占領下での制定過程を理由に憲法の法的根拠を無効であるとする論議は意味をなさないとの認識を示した。
 
 また、小沢代表は、北朝鮮の核実験について、政府の対応を「場当たり的」と批判。日本の有事を想定した周辺事態法を、国連安保理の経済制裁決議と一緒に考える政府の論理構成には無理があると指摘した。首相は、国際社会の協力の中で、同盟国の米国と緊密な連携をとって対応していくのは当然であると答弁。「国民の生命と財産を守る責務を果たすために、あらゆる可能性をさぐる」と述べ、議論は平行線のままだった。

 小沢代表は9月25日午後、臨時党大会で代表に再任された後、体調不良のため都内の病院に緊急入院、予定されていた臨時国会での代表質問も鳩山由紀夫幹事長が代わるなど、一時健康状態が気遣われていた。この日の討論では、小沢氏独特の「あー」「うー」という間がこれまでより多く、また長く感じられる印象を受けた。対照的に安倍首相は、憲法改正問題や日米同盟に関する答弁では、よどみなく持論を展開し、場内からのヤジにも「静かにしてくれませんか」と余裕をみせ、初の党首討論会をそつなくこなした。

 討論会後、小沢代表は国会内で記者団に小泉前首相と比べ、「小泉首相は、多分僕の言っている趣旨は分かっているが、答弁としてはまったく違うことを言っていた。安倍首相は、分かってるか分かっていないか、分かりません」と新首相の印象を語った。【了】