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名人ここにあり、登山靴づくりの匠(下)

名人ここにあり、登山靴づくりの匠(下)
森本勇夫さんの手縫いの登山靴で、かつて植村直己さんが冬季エベレストに挑戦した。ヒマラヤをめざす登山家の客が多い。(撮影:穂高健一)
【PJ 2006年09月11日】− (上)登山最盛期には、森本勇夫さんは真夜中まで働いていた。一針ごとに松脂の引いた糸を強く引っ張る作業だから、硬いタコだらけの掌になった。タバコの火を置いても、熱さに耐えられたという。

 「これは職業病かな。近ごろはテニス肘という関節炎症で苦しめられている」。最近は遅くまで根をつめた作業をやらない。しかし、癖のある足となると、機械では対処できないから手縫いになる。関節炎にも負けず、森本さんは頑張っているそうだ。

 手縫いで登山靴を作れる職人は少ない。となると、森本さんの後継者づくりが大切になる。ゴローには現在、王子工場と店内を合わせると6人のスタッフが働く。熟練工を含めた3人には手縫いの極意の技術を指導していると、森本さんの説明があった。

 登山靴の選びについて、職人の目からみたアドバイスをもらった。「靴はきつ目でもダメ、ゆる目でもダメ」。登山靴はほかの靴に較べ高価だから、簡単に買い替えるわけにはいかない。一度買ってしまえば、サイズが合わなくても、がまんして履くことになる。結果として、不愉快な登山になるという。

 履くひとの好みによって、きつ目好みとゆる目好みのひとでは、足のサイズがおなじ場合でも、最大で3センチの違いがある。靴の横幅が多少のところきつ目でも、機械的に伸ばすことはできる。しかし、踵から爪先の長さがきつ目では、革を伸ばす手立てがない、致命的だという。

 新品の登山靴はいきなり登山ではなく、まず山に入る前に、自家のまわりを歩いたり、階段を上り下りしたりして、足になじますことが大切だという。登山者には関心度の高い、靴ひもの結び方について質問してみた。

 「登りも、下りも、靴ひもはしっかり締めることです。下りでゆるいと、靴のなかで足が前に行ってしまい、指先を痛める。登りだと、靴と踵とが擦れてマメができる。職人は、利用者が靴ひもをしっかり絞めた状態で作るのだから、ゆる過ぎるのはダメですよ」と強調した。

 下山してきたら、登山靴には防水クリームをしっかり塗りこむ。靴底のゴムはしっかり泥を拭い落とす。付着した土が酸性にしろ、アルカリ性にしろ、ゴムには大敵だという。

 「100パーセント完璧な登山靴などできない。登山靴は仮縫いができないし、山に行ってみないと、本当の履き心地はわからない」と森本さんは話のなかで、何度もくり返していた。現在の優れた技術にも満足せず、立ち止まらず、つねに究極の登山靴づくりを目標にしている。【了】

■関連情報
ゴロー
  東京都文京区本駒込6−4−2
  電話  03−3945−0855
  FAX 03−3943−8902
  火曜・定休日

記者HP:穂高健一ワールド 
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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