苦労して手に入れた仕事だが、本人の希望や条件と企業が提供する職場の「ミスマッチ」に起因する早期離職が問題視されている。「実は、一流大学を卒業して、自分に自信がある若手社員ほど離職率が高い傾向が見受けられます」と経営コンサルティング企業の採用担当課長は、退職理由のメモを覗きながらそう言った。メモには「健康上の理由」「資格取得のため」「転職のため」などと当たり障りない理由が記されているが、本当の理由は本人しか分からない。

 厚生労働省が管理する雇用保険の被保険者記録をもとに算出したという「7・5・3現象」によると、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が3年以内に離職するという。また、総務省「労働力調査 平成16年平均結果の概要」には、個人または家庭の都合など自発的理由による離職者は106万人という数字が示されている。この自発的理由による離職が若者の失業問題の特徴といえる。

 若者の離職には、職場のミスマッチと自発的理由が同居する。現代の「優等生」タイプの若者がそうした落とし穴に陥りやすいという。希望が叶わなかった者に比べて、第1志望の企業や職種に就いた者は、憧れを抱いたまま入社する傾向が強いと言われる。だが、実際にかれらを待ち受けているのは、希望と違った配属先や性格的に合わない上司、過酷なノルマや長時間労働など。

 さらに、職場では、好むと好まざるとにかかわらず、様々な人と付き合っていかなければならない。接待などでは「ヒューマンスキル」という総合力も試される。教科書もなければ答えも一つとは限らない。はじめから「100点満点」を目指し、分からないことを上司などに質問するという選択肢を自分で閉ざしてしまう。

 失敗や挫折の経験がない「優等生」タイプに限って、自分自身を追い込んでしまい、最後には「この職場は自分に合わない」という結論に至って離職の道を選択する。一方で、採用時にはあまり期待していなかった人材が、突然、力を発揮するというケースも少なくない。いわゆる「大化け」するタイプだ。

 「不思議なもので『化ける』と言われる若い人材もいるのです」と前出の課長は言う。そこが採用の難しさであり、おもしろさという。「石の上にも3年」ということわざがあるように、どんな仕事でも辛抱は必要だ。【了】