15日、参拝を終えた小泉首相(左)の表情には、靖国神社に到着したときのような厳しさはない。(撮影:吉川忠行)

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戦後61回目の終戦記念日を迎えた15日、小泉純一郎首相は、日本中が注目する中、東京都千代田区の靖国神社に参拝した。就任5年目にして初めて、公約であった「8月15日の靖国参拝」を実行したことになる。中国と韓国政府は相次いで声明を発表、首相の参拝を激しく非難した。

 小泉首相は、2001年の自民党総裁選で終戦の日の靖国参拝を公約に掲げて当選して以来、毎年1回靖国に参拝してきたが、これまでの5回はいずれも8月15日を外してきた。総理・総裁としては最後の参拝になる今年、初めて公約通り終戦記念日当日の参拝となった。

 モーニングで正装した首相は午前7時30分ごろ、官邸を公用車で出発し、およそ10分後、厳重な警備が敷かれる靖国神社に到着。午前6時の開門前から待機する数百人の報道関係者や戦没者遺族、旧軍関係者が見守る中、公用車を降りた首相は、口を真一文字に結んだ厳しい表情のまま本殿に向かった。小雨模様の天候のためか、上空には報道各社のヘリが数機低空で旋回、辺りは一時ローターの騒音で騒然となった。

 自費で献花料を払った首相は、神官の案内で本殿に向かい、神道の作法である二礼二拍手一礼ではなく一礼形式で参拝。芳名録には「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳した。在任中最後となった参拝を終えて到着殿に姿を現した首相の表情には、到着時に見られた程の厳しさはなかったが、報道関係者の呼びかけに応じることもなく、黙したまま公用車に乗り込み、到着から約15分後に神社をあとにした。

 首相の靖国参拝は国内メディアのみならず海外メディアも速報で伝えた。とりわけ中国と韓国のメディアは、東京特派員が現場から参拝の模様を報じるなど、関心の高さを示した。朝鮮日報は、日本向けの電子版で「小泉首相が靖国参拝」という見出しで参拝の模様を速報。中央日報も、日本語ホームページで、小泉首相が「靖国神社参拝を強行」と伝えた。一方、聯合通信は「深い失望と憤怒を表明する」との韓国政府の声明を日本向けのホームページに掲載。さらに、聯合通信は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がソウル市内で開かれた「光復節」(祖国解放記念日)式典で、「過去に対して心から反省し、実践で過去と同じことを繰り返す意思がないことを明確に証明しなければならない」と述べたことを伝えている。

 韓国政府同様、中国政府の反応も早かった。中国大使館は、日本向けホームページに中国の外務省に当たる外交部の抗議文を掲載した。「小泉日本首相靖国神社またも参拝したことに強く抗議」と題する声明文で、中国政府は「日本軍国主義侵略戦争の被害国人民の感情を著しく傷つけ、中日関係の政治的基礎を破壊するこの行動に対し、中国政府は強く抗議する」と首相の靖国参拝を非難。A級戦犯が合祀される靖国に参拝することは「国際的正義に対する挑発であり、人類の良識を踏みにじるものでもある」と断じた。その一方で、声明は「われわれは、日本各界の有識者が歴史的潮流に順応し、政治的障害を取り除いて、一日も早く中日関係を正常な発展軌道に戻るよう努力することと信じる」と結んでいる。

 首相の靖国参拝に対して、野党各党も厳しく反発。社民党の福島瑞穂党首は、靖国神社から直線距離で500メートルほど離れた千鳥ヶ淵戦没者墓苑で、正午前から開かれた戦争犠牲者追悼集会に参加。「私たちはいかなる理由からも、国のための死を繰り返してはならない」と訴え、「政教分離を踏みにじり、参拝を強行した小泉首相に強く抗議する」と非難した。民主党の鳩山由紀夫幹事長は「立つ鳥、跡を濁す行為であり、無責任極まりなく、遺憾の一言に尽きる」と談話を発表。共産党も志位和夫委員長が、「あとは野となれ山となれ」という小泉外交の無責任さをさらけだしたものであるとして厳しく抗議した。