今週のお役立ち情報
ジダンの頭突きとOECD対日審査報告書。(4)
2006年07月24日06時07分 / 提供:PJ
【PJ 2006年07月24日】−
(4)企業と組合、そして政府とが共犯者だ
(3)からのつづき。 家計経済研究所の『消費生活に関するパネル調査』は、93年以来、現在まで毎年、同一の個人を追跡調査してきた。これによると、金融危機が発生し、企業のリストラが一段と進むようになった98年ごろから、所得階層の固定化傾向が見られる。
労働関係の諸計数は、97、98年頃を分水嶺に、日本が未体験ゾーンへ入ったことを示唆している。このころといえば、バブル崩壊後ようやく腰をあげ、企業が必死の生き残り策を講じた時期だ。日本全体を日本株式会社として見ると、98 年からの3年間の間に、15兆円の経常利益の改善があり、その圧倒的な部分は固定費の削減で賄われた。その半分は人件費の削減、4分の1は利払い費。
特に人件費の削減が大きく、企業の収益を回復させた原動力となった。企業は一人一人の賃金を押さえることなく、雇用の中身を正社員から非正社員へとシフトすることで人件費総額抑制に成功したのだ。ビジネスモデルに、あまり手はつけられていない。だから仮に輸出が減少するなど景気の減速が始まると、再び固定費の削減に向かわないと収益は上がらなくなる。この傾向は2000年前後から加速した。企業と組合、そして政府とが期せずして、「加速」に共犯したからだ。
企業:非正規社員を増やすことで、手っ取り早く人件費の「構造改革」を実行した。
組合:正社員の雇用を守った。
政府:手をつけやすいところから規制緩和を進め、「構造改革」の実績をあげようとした。
「規制緩和」の「共犯」は99年から始まった。99年の労働者派遣法改正で、派遣雇用が原則自由になった。ホワイトカラーの職場に派遣が大量になだれ込む。更に2003年、製造現場でも派遣が解禁された。次に焦点は一旦「正規社員」に移った。これは3月のフランスの暴動とよく似たポイントだった。「労働基準法18条の2」の立法問題だ。雇用契約は、民法上「各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる」とされており、使用者側の解雇権は制限されていない。かたや判例法理によって「解雇権といえども濫用は許されない」とされ、実際上解雇はむつかしい。
この点を労働基準法に「解雇自由の原則」として明文化しようとした。2003年のことだ。これに先立つ2001年10月2日、小泉首相は衆議院での代表質問に答えて「雇用の流動化が進む中で、解雇基準やルールの明確化は必要だ」と答え、解雇法制への取り組みを表明していた。目的は現在の労働者、将来の労働者、そして使用者の利益を調整し、成長企業への人材供給を後押し、もって経済の活性化、日本の成長エンジンを再起動させることであった。
政府原案は「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。但し、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされる。
しかし最終、原則と但し書きを逆転して「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と修正された。実際上解雇はむつかしい、現状だけが残ってしまったのだった。
この結果、何が起きたか。「正規社員」の優位性は温存され、就職の入り口では「パート」「派遣」「契約社員」が増加、また一度結婚、出産で退社すると、二度と「正規社員」としては採用されない、これまでの雇用慣行が強化され、定着した。「日本はもはや平等な国ではない」、OECD対日審査報告書の指摘はまさにこのことである。【つづく】
■関連情報
・非正規雇用の拡大が意味するもの
・経済格差と日本人 再挑戦の機会拡大が急務
WEBサイト『金融リテラシー』編集長:PJ活動のベースとなるクリッピング作業を公開、またメルマガも配信しています。
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 神宮司 信也【 東京都 】
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(3)からのつづき。 家計経済研究所の『消費生活に関するパネル調査』は、93年以来、現在まで毎年、同一の個人を追跡調査してきた。これによると、金融危機が発生し、企業のリストラが一段と進むようになった98年ごろから、所得階層の固定化傾向が見られる。
労働関係の諸計数は、97、98年頃を分水嶺に、日本が未体験ゾーンへ入ったことを示唆している。このころといえば、バブル崩壊後ようやく腰をあげ、企業が必死の生き残り策を講じた時期だ。日本全体を日本株式会社として見ると、98 年からの3年間の間に、15兆円の経常利益の改善があり、その圧倒的な部分は固定費の削減で賄われた。その半分は人件費の削減、4分の1は利払い費。
特に人件費の削減が大きく、企業の収益を回復させた原動力となった。企業は一人一人の賃金を押さえることなく、雇用の中身を正社員から非正社員へとシフトすることで人件費総額抑制に成功したのだ。ビジネスモデルに、あまり手はつけられていない。だから仮に輸出が減少するなど景気の減速が始まると、再び固定費の削減に向かわないと収益は上がらなくなる。この傾向は2000年前後から加速した。企業と組合、そして政府とが期せずして、「加速」に共犯したからだ。
企業:非正規社員を増やすことで、手っ取り早く人件費の「構造改革」を実行した。
組合:正社員の雇用を守った。
政府:手をつけやすいところから規制緩和を進め、「構造改革」の実績をあげようとした。
「規制緩和」の「共犯」は99年から始まった。99年の労働者派遣法改正で、派遣雇用が原則自由になった。ホワイトカラーの職場に派遣が大量になだれ込む。更に2003年、製造現場でも派遣が解禁された。次に焦点は一旦「正規社員」に移った。これは3月のフランスの暴動とよく似たポイントだった。「労働基準法18条の2」の立法問題だ。雇用契約は、民法上「各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる」とされており、使用者側の解雇権は制限されていない。かたや判例法理によって「解雇権といえども濫用は許されない」とされ、実際上解雇はむつかしい。
この点を労働基準法に「解雇自由の原則」として明文化しようとした。2003年のことだ。これに先立つ2001年10月2日、小泉首相は衆議院での代表質問に答えて「雇用の流動化が進む中で、解雇基準やルールの明確化は必要だ」と答え、解雇法制への取り組みを表明していた。目的は現在の労働者、将来の労働者、そして使用者の利益を調整し、成長企業への人材供給を後押し、もって経済の活性化、日本の成長エンジンを再起動させることであった。
政府原案は「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。但し、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされる。
しかし最終、原則と但し書きを逆転して「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と修正された。実際上解雇はむつかしい、現状だけが残ってしまったのだった。
この結果、何が起きたか。「正規社員」の優位性は温存され、就職の入り口では「パート」「派遣」「契約社員」が増加、また一度結婚、出産で退社すると、二度と「正規社員」としては採用されない、これまでの雇用慣行が強化され、定着した。「日本はもはや平等な国ではない」、OECD対日審査報告書の指摘はまさにこのことである。【つづく】
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・経済格差と日本人 再挑戦の機会拡大が急務
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