「○○区からお越しの○○さま、婦人服売り場でお連れさまがお待ちです」・・・って、こんなアナウンス。デパートなどで皆さんも1度くらい耳にしたことがあるんじゃないでしょうか? 

 実は接客業を営む多くのお店では、来店している一般客にわからないように、店員に何かしらのメッセージを伝える「サイン放送」があるというんです。サイン放送とは、ある種の隠語・符丁のようなもので、仲間内だけで通じる、いわば「合言葉」。

 「お客様に知られたくない内容や業務連絡の際に、従業員だけにわかる特別な放送を行っています。例えば、従業員を呼び出す際には、『○○課の○○さん』とアナウンスをかけるのではなく、『○○区からお越しの○○さん』と、一般の放送を装います」(デパート勤務 女性)

 「○○区」は部署名や役職、「○○さん」は本人の名前や課を表す隠語として使われるのだそう。でも、実際に「○○区からお越しの○○さん」がいた場合はどうするんでしょうか・・・?

 「稀に該当されるお客様がいらっしゃる場合もありますが、基本的には○○区は遠方・架空の地名を用いるなどしています。また、『〜までお越しください=お客様用』、『〜までご連絡ください=従業員用』など、わかりやすいように使い分けもしているんです」(同)
 
 他にも、「万引き」発見の際には、「○階○○売り場までお越しください」、「内線○○番までご連絡ください」など、具体的に盗難のあった場所を示すこともあるのだとか。また、アナウンスの他にも、店内に流す「曲」にメッセージをこめる場合もあるそう。

 例えば、「雨が降り始めたので包装をビニール仕様に変更してください」という意味をこめて、クラシック音楽や「雨にぬれても」の音楽が流れたり、「雨が上がりました」の合図に「オーバーザレインボー」、「蒼いノクターン」の音楽が流れたり。スーパーなどでは、「もう少しで売り上げ達成」の場合に「F1」、「ロッキー」のテーマ曲、「混雑時の応援要請」に「スターウォーズ」、「HELP!」などの音楽が流れたりするのだとか。

 ちなみに、飲食店や洋品店などの店員間でも「サイン」は使用されているようで、「トイレに行ってきます」は「3番行ってきます」、「食事に行きます」は「遠方行きます」など、さまざまな工夫がされているよう。でも、ゴキブリのことは「太郎さん」、「ジョージ」だなんて明らかにおかしいですよね!? まぁ、サイン曲のように、聞いただけでは連想できないその唐突な名称にこそ、「サイン」の真髄があるってコトでしょうか・・・?(清川睦子/verb)