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この報道写真があなたに何を訴えているか?(下)

この報道写真があなたに何を訴えているか?(下)
戦死した海兵隊員の遺体の帰還。客席窓からみえる乗客は一人も気づいていない。トッド・ヘイスラー(米国:ロッキーマウンテンニュース紙)(写真掲載許可済み)
【PJ 2006年06月26日】− (中)からのつづき。 『世界報道写真展2006』は写真を通して、「戦争とは何か」を深く考えさせられる。

 銃を持った若い兵士が軍靴で、路上に伏す中年男性(民間人)の顔を蹴飛ばす写真があった。年齢差は親子ほどちがう。市民の弱い立場の痛々しさ。他方で、若い兵士が軍務を外れて市民にもどったときに、歪んだ心の人間になっていないだろうか、と考えてしまう。戦争が双方に心の傷跡を残させる。それを証明するかのような写真だった。

 「戦争って、人間になにを残すのだろうか」。6歳の少年の遺体が粗末なダンボールを柩代わりとし、埋葬の準備がなされている。柩のまわりで慟哭している身内。パネル写真を観ているほうがやり切れない。写真展の会場では、空恐ろしいのだろう、目を逸らすひとが多い。組み写真で、撮影はベン・カーティスさん。

 イラク戦争で死亡した米兵が、家族のもとに帰るまでを追った組み写真がある。『戦死した海兵隊員を称えて:リノ空港に到着したジェームズ・キャシー少尉の遺体』。トッド・ハイスラー(米国)さんのこの写真は、旅客機の機体から柩が下ろされているが、乗客はまったく何も知らされていない日常の顔だ。このさき兵士の遺体が家族のもとに着くと、妊婦の妻が臨月のような、目立った腹部を柩に当てている写真がある。「戦争は、この家族になにを与えたのだろうか」。生まれてくる子どもの将来を考えると、あまりにも哀れだ。

 報道写真は事件や事故や災害のみならず、地球環境の危機をも訴える。ノルウェーで撮影された北極クマ。流氷のうえでアザラシを捕獲し、食べている。四肢の回りはアザラシの血で汚れている。温暖化の影響なのか、まわりには流氷が少なく、捕食するアザラシの群れなど見当たらない。一枚の写真から北極圏の生態系が狂い、北極クマが絶滅の危機に瀕しているという、実態の一部が読みとれた。撮影はポール・ヘルマンセンさん。

 アマゾン水系で、クリアイ湖が干上がった写真。ここ数十年の最悪の干ばつに見まわれていると説明する。アマゾンは大密林、というイメージは吹き飛ぶ。「地球はだいじょうぶか」と、環境問題の深刻な状況を感じさせる。ダニエル・ベルトラさんの撮影。

 『世界報道写真展2006』は、悲しむ人間の姿を如実に浮きぼりにした写真が多い。戦争の悲惨さ、環境問題の深刻さを訴え、「人間とは何か」という、観る側に質問すら投げかけてくる。ひとの心まで深く入り込む写真展だ。【了】

■関連情報
会場 東京美術館 二階展示室
場所 東京都目黒区三田1−13−3 恵比寿ガーデンプレイス内
   JR恵比寿駅東口より徒歩7分
電話 03−3280−0099
観閲料 一般700円 学生600円 中・高校生/65歳以上400円(各団体割引あり)

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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