「累積1,000億円の減収 NHK“倒産”の危機」という記事でNHKは大揺れだ。NHKは否定しているが大幅減収は事実だ。このままだと「倒産」もありえたが、自民党竹中総務相の私的懇談会の報告書が受信料の義務化を決め、かろうじて最悪の事態は免れた、ともいえる。

週刊朝日は「NHK“倒産”の危機」という特集を2週にわたって掲載している
週刊朝日は「NHK“倒産”の危機」という特集を2週にわたって掲載している

   問題の記事を報じた週刊朝日6月16日号によると、NHKの06年度の減収は一連の不祥事発生前と比べて年間1,000億円以上の減少になる。その理由は(1)受信料の85%が口座引き落としだが、これにはタイムラグがあり支払い拒否全体数に反映していない(2)支払拒否の件数は面接困難による未納状態(125万件)、経済的理由などによる滞納(139万件)が含まれていない、としている。NHKが言っている数字は見せ掛け、というわけだ。

集金システムが不祥事で崩壊

   NHKが発表した06年3月期決算は、受信料収入は前期比385億円減の6,024億円、売上高に相当する経常事業収入は同105億円減の6,749億円。番組制作費や設備経費などを圧縮し収支均衡は維持したが2年連続の減収減益。3月末の受信契約総数は前期比44万件減の3,618万件となった。
   受信料収入は不祥事発覚前には約6,500億円もあった。収入の1割以上のコストをかけた集金システムのお蔭だった。しかし、このシステムが不祥事で崩壊した。しかも、受信料不払いの理由も当初は「不祥事への批判」だったが、1年後は「隣は払っていない」という「不公平感」に変わった。不払いが継続される恐れがあるということだ。
    このままではNHKは倒産に陥ってしまう。危機感を抱いたNHKは不祥事のあと、NHK改革を論議してきた自民党の通信・放送産業高度化小委員会と竹中懇談会に期待した。「NHK寄りの結論を出してもらえる」よう橋本元一・NHK会長は郵政族ら国会議員のもとに日参した。

義務化で支払い拒否は明確な放送法違反となる

   自民党の小委員会と竹中懇談会は06年6月上旬、それぞれ最終報告書をまとめた。二つの報告書ともNHK受信料制度については支払いの義務化を明記。竹中懇談会の報告書には受信料引き下げやチャンネル数の削減もあったが、受信料義務化の実現でNHKは首の皮がつながった。受信料の義務化で支払い拒否は明確な放送法違反となり、督促できる。
   もっとも、NHKの一部には「いまの放送法にも契約義務化はある。受信料支払いを義務化してもどこまで効果があるだろうか。不払いに罰則を科すことを早期に実現しなければ拒否はなくならない」という強硬論もある。
   NHKは当面、不払い者に対しては支払いの義務化で対応し、効果が薄ければ罰則導入に踏み込むという二段構えの計画のようだ。受信料義務化によって、かろうじて、「倒産」は回避できるかもしれないが、危機は簡単には消えないようだ。