新しいネット販売ビジネスとして、「ドロップシッピング」が注目を集めている。アメリカではアマゾンや、専門業者のカフェプレスなどがこのシステムを手がけ、成功しているという。日本でもドロップシッピングに参入する企業が現れ、代理店の募集が始まった。在庫なしで、手間がかからず、儲かる、という触れ込みだが、本当に「おいしいビジネス」なのだろうか?

06年秋にドロップシッピングサービスが日本に本格上陸
米国では有名なドロップシッピングの専門業者カフェプレス。日本でも参入企業続々
米国では有名なドロップシッピングの専門業者カフェプレス。日本でも参入企業続々

   「ドロップシッピング(Drop Shipping)」は、日本語に訳すと「直送」のことで、サイトの運営者が在庫を持たずに商品を販売する方法のこと。商品管理などは、「ドロップシッピング」の業者(支援企業)が行う。サイトに注文が入ると、支援企業が商品の仕入れ、発送、代金決済などを代行し、商品を直接購入者に発送するシステムだ。サイト運営者は在庫リスクを負わずに商品を売ることができる。
   最近になってこのドロップシッピングに本格的に乗り出す企業が出てきた。2005年11月、サイバーコミュニケーションズドロップシッピングを導入。06年5月16日には、リアルコミュニケーションズが、アフィリエイトサービス「A8.net(エーハチネット)」を運営しているファンコミュニケーションズと業務提携を行い、日本最大規模のドロップシッピングサービスが06年秋には本格的に始まる予定だ。各社とも、ドロップシッピングに対する反響はかなり大きいという。

期待感だけが先走りしているというのが実情だ

   06年3月号の「YOMIURI PC」は、「新しいネット商法“ドロップシッピング”は在庫なし・発送せず・集金せずでリスクなし」と題し、アフェリエイトに次ぐ「もうかる」商法として紹介した。しかし、全くリスクがないとは言い切れない。リアルコミュニケーションズは、「ドロップシッピングは在庫リスクがないという点で低リスク。ただし、(将来的に)自作の商品を売るとなると、当社が個人サイト運営者から購入するかたちになるため、在庫リスクは発生する」と答えた。また、ドロップシッピングサービスを利用する際の登録料・システム料などの発生に関して、同社はまだ検討中だという。サイバーコミュニケーションズは、サイト運営者側からサービス手数料を徴収している。要は、サイト運営者側もある程度の負担が強いられるというわけで、「もうかるだけ」という単純なビジネスではないということだ。
   ネット事業などでマーケティングを手がけるある会社の広報は、「顧客ニーズが読めるかや、集客力のあるサイト作成ができるかどうかがポイント。マーケティング能力によって成功する可能性は変わってくるのではないか」とコメントした。もちろん、個人のネット主宰者のマーケティング能力には限界がある。インフラもまだ整っていない。期待感だけが先走りしているというのが実情だ。サイバーコミュニケーションズもJINビジネスニュースの取材に、「ドロップシッピングは確実に浸透してきているが、まだまだこれからという感じだ」と答えた。
   三菱総合研究所の高橋衛主任研究員は、ドロップシッピングが成功しているといわれるアメリカと日本では消費者意識が異なる、と指摘し、「日本で儲かるようになるまでには、時間がかかる。まだ、ドロップシッピングの認知度を高めなければならない段階にすぎない」と見ている。その理由は以下の通りだ。
   ――日本の消費者は、有名店や信用といった「後ろ盾」があると、安心して買い物をする。しかも、ナショナルブランドなら、ネットで直接アクセスできる。個人のホームページがそれに勝てる力を持てるかがポイントになる。