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大学誘致は市民にどんな利益をもたらすか (上)

【PJ 2006年04月21日】− 平成3(1991)年に、上野に拠点をもつ東京芸術大学(芸大)が、茨城県取手市に第2キャンパスを開校した。取手キャンパス開校に際して、取手市には競輪の町のイメージから脱却し、文化都市として発展していきたい、という期待があった。

 取手市長と芸大学長との間で、『芸術によるまちづくり』の相互協力が打ち出された。芸大はわが国でも有数の伝統校だが、総合大学と違い、そもそも学生数は決して多くない。自治体と市民と大学が上手に結びつかなければ、『おらが町に、大学がきた』という、市民の独りよがりのステータスに終わってしまうだろう。

 平成11(1999)年、取手キャンパスに先端芸術表現科という新しい科が新設された。一般市民にとっては日本画や油絵のような親しみ深い芸術とはちがうが、同科が取手市に対して「取手アートプロジェクト」を提案し、市民と共に実践していくことによって『芸術によるまちづくり』の実践が始められたのだ。

 芸術系の大学にも、大きな課題がある。芸大卒業後、作家として一本立ちするまでには長い年月を要する。「問題は、大学を卒業したあと、満足に芸術活動ができない環境に追いやられていることです」と語るのは、芸大の先端芸術表現科教授、渡辺好明さんである。

 明治から昭和の半ばころまでは、資産家や実業家がこぞって芸術家のたまごの作品を買い上げたり、衣食住の支援をしたりしていた。戦後は若手アーチストを育てる、自立支援の社会的サポートや制度が後退してしまった。渡辺教授はかつてドイツに留学した。ドイツは地方分権型社会で、住む人々と大学との間にも良好な関係があったという。

 「いまの日本において、若い作家を育てるためには、市民と行政の協力が必要なんです」と渡辺さん。それには大学と地域との連携が不可欠だという。「若い芸術家たちを支援し、取手にくれば市民の理解のもとに、自由で活発な芸術活動ができる、そういう環境を取手につくりたい。その目標を達成するには、まず市民に芸術を身近に接してもらう必要がありました」。

 渡辺さんたちは99年、大学と取手市民と自治体の三者が連携して取り組む、取手アートプロジェクト(TAP) を立ち上げた。TAPは若いアーチストの活動支援のために、創作発表の場を提供することからはじまった。発足時から、隔年で開催している全国公募による野外アート展『取手リ・サイクリングアートプロジェクト』、05年6月より開催している『TAPサテライトギャラリー』といった展覧会を通した若手作家の育成のほかに、取手市内に在住する芸術家たちのアトリエを見てまわれる、『オープンスタジオ』を実施している。

 昨年度の『オープンスタジオ』では、27カ所のアトリエが公開された。市民がアトリエに出向いて好き勝手にのぞき見られる、という単なる企画ではない。アトリエ情報やマップなどがセットになった『TAP2005公式ガイドブック』を作ったり、市民に無料のバスツアーを実施したり、アーチストと一緒に共同制作したり、取手のまち歩きとアトリエ訪問の面白さとを盛り込んだりしている。

「毎月、若手の作家を招き、サテライトギャラリーのブースで展覧会を行っています。会期は三週間です。残りの一週間は切り替え準備に費やしています」と語るのは、TAP事務局の及位(のぞき)友美さん(芸大助手)である。【つづく】

■関連情報
東京芸術大学
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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