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大道芸の楽しみ方を忘れた日本人

大道芸の楽しみ方を忘れた日本人
東京・秋葉原駅前で演奏するペルー人楽団、17日。なぜか、立ち止まらない日本人。(撮影:穂高健一)
【PJ 2006年04月20日】− 派手な民族衣装を着たペルー人たちが17日の夜、東京・秋葉原駅前で楽器演奏をしていた。電気街に買い物にきた欧米人の親子連れが聞き入っていた。腰を落とした日本人の若者が遠巻きに数人。オフィスから駅に向かう、大勢の通行人は楽団『アミゴス』を横目で一瞥し、通り過ぎていく。拍手は外国人のみ。売れるCDは細々としたものだ。

 5人の楽団員は午後3時から演奏を続けていた。残り三曲、午後7時で止めるという。投げ銭が入った楽器ケースをのぞき見ると、千円紙幣が2枚と、硬貨がすこし。「日本人は忙しいね。立ち止まって聞いてくれない」と、楽団リーダーのカル・マンタさんがたどたどしい日本語で応えてくれた。日本に来て二年半。ほかのメンバーもほぼ同じ滞在期間のようだ。ふだんは新宿とか、横浜とか、秋葉原とかを回っている。今度の週末には静岡県・清水市のフェスティバルに行くという。

 どこに行っても、通行人はあまり評価してくれないと、マンタさんは嘆く。3000円のCDが売れなくても、百円玉一つで喜ぶのが芸人。まず立ち止まって聞いて欲しいのだ。しかし、日本人は道路の芸人にたいして、ことのほか素っ気ない態度らしい。

 遠い過去の日本は大道芸が盛んだった。バナナの叩き売り、がまの油売り、南京玉簾、紙芝居、バイオリン弾き、正月には獅子舞。これらが街頭の風景の一つ。庶民の癒しの娯楽と結びついていた。いまでは道路交通法で禁止。法律が背景にあるためだろう、日本人は大道芸を違法なものを見る態度となった。ひとつの法律が日本人の情感を奪い、路上の伝統芸能すら消させてしまったのだ。同時に、日本人は大道芸のたのしみ方を失ってしまった。 

 ペルーの楽団『アミゴス』が演奏している場所の信号を渡った、千代田区立・和泉橋区民館4階で、日本笑い学会(会長は井上宏・関西大学名誉教授)のメンバーのひとり川上千里さん(60代・薬剤師)が、『こころを伝える、むかしの遊び』と称し、十数人を集めたバルーンアート(風船の芸)の講習会を開いていた。秋葉原では初の開催だが、予想以上に人が集まったようだ。台東区民館では113回も続いている、と川上さんがみずから作った手づくりのチラシをみせてくれた。

 団塊の世代が60代に入ってきた。定年後のシニアたちの間で、古典的な風俗芸能は静かなブーム。口上や身振りが愉快な南京玉簾、がまの油売りなど大道芸を学ぶ機運が高まっているようだ。シニアたちの芸人は公民館、区民センターなどで技量を磨き、各地の施設を回っている。

 公園広場などは許可をとる手続きがやたら面倒。大道芸でありながら、路上で披露できない。車社会の法規制の道路交通法が足かせになっているのだ。大道芸で、多少のところ歩行者の邪魔になっても、目くじらを立てるひとは少ないはずなのに。

 日本人は欧米人に比べ、スマイルや笑いが少ないといわれる。大道芸人たちの回りで笑ったり、音楽を聴いたり、飛び入り参加したり、笑いの多かった古来の日本人の心を取り戻したいものだ。歩道と車道の区分された道路ならば、危険はほとんどない。道路は国民の財産。大道芸に開放すれば、歩道が無料の舞台として有効活用できる。

 庶民が投げ銭の百円玉ひとつで楽しめる、心豊かな日本をよみがえらせる。そのためにも、高齢化社会に見合った道路交通法の改正がのぞまれる。【了】
 
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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