今週のお役立ち情報
東京荒川の風物詩!爆笑・新春マラソン大会
2006年01月16日08時54分 / 提供:PJ
【PJ 2006年01月16日】−
東京都内の荒川河岸で、手づくりの新春マラソン大会が15日、行われた。主催は愛好会の北区ラジオ体操連盟である。ここには著名なスポーツ選手によるストレッチ指導などない。メーカーやスポーツ雑誌の協賛はないし、自治体の後援すらない。未公認大会で、ラジオ体操が健康の源と教えられてきた六十代、七十代の人たちの手づくり大会である。
NHKラジオ体操が流れる。六十代の女性・木戸指導員の下で、参加者全員が小中学生にもどったような表情で体操がはじまった。フルマラソンのスタートは午前9時30分。ランナーが緊張顔でスタートラインにならんだ。会長がピストルを頭上高く構えた。カウントダウンがはじまる。10秒、5、4、3、2、1秒。ピストルがならず、空砲。ランナーは爆笑。だれも走り出さない。
「ピストルに油をやらなかったからだな。あぶら汗ばかり出る」。
ユーモアたっぷりの会長の言い訳で、ランナーの笑いがなおさら止まらない。1分後には、口で〈バーン〉と声をあげる。また、笑う。大時計の表示はだれも直さず、そのまま。3000円の参加費を払った、一級河川・荒川の河岸を走るマラソン大会である。多少のタイム誤差なら許されるのが、第37回新春・東京喜多(北)マラソンである。毎年、新春(喜多大会)と六月(無名月大会)の2回おこなわれている。
歴史は長い。元祖・市民マラソンの発祥地だと、会長は自慢する。東京オリンピックの前年の、1963(昭和38)年から実施されている。「その当時は、市民が42キロ走るのは変人・奇人といわれたものですよ」。若かった愛好会のスタッフがいまや六、七十代の年齢層となっている。スタッフというよりも、下町のお手伝いさんである。大会運営の意思統一はあまり図られていない。それだけにミスが多く、ちぐはぐなユーモアたっぷり大会である。
ハーフが15分遅れでスタートした。記録係の原さん(まだ七十歳じゃないという女性)に参加人数を聞けば、会長じゃないとわからないという。彼女は正真正銘の医師である。外科医とか、内科医でなく、心身医学の専門家だという。マラソンとの関係を尋ねると、自閉症や欝病の参加者がいれば、相談に乗れるという。そういう人がハーフ21キロ、フル42キロを走るのだろうか。
大会会長に参加人数を尋ねると、「夏は1000人、1月は700人。昨日雨だったから、もっと少ないかな」という答え。だれもが手計算で実数を集計する気などないようだ。主催者が参加者の正確な数を発表できないのが、この大会の特徴のひとつ。
「去年、甲子園にいった慶応高校野球部が参加しているよ。拓大マラソン部は箱根駅伝に出るまえ、この大会の常連だった」。会長からさらに話を聞けば、この日の真夜中の一時半から、みずから細いワイヤロープを使い、車のライトを照らし、コースを計測したという。毎年同じコースじゃないの?
「マラソンの規定は路肩から一メートルのところ。河川敷は水溜まりが多くできるし、それを避けて通るから、遠回りになる。ランナーのために実測してやる」。会長にはきめの細かさと律儀がある。思いやりかもしれない。しかしながら、スタート前は快晴。水溜まりが乾けば、距離が短くなると思うが、昨晩の強い雨ではそこまでは考えられなかったようだ。
「なんでも会長」も特徴のひとつ。甘酒の担当「おばさん」が腰痛の注射をうって手伝いにきたという。塩加減、生姜の加減までも会長に味見をしてもらう。ハーフマラソンのトップがやってきた。会長の指示がなかったのか、ゴールテープ係が居ない。呼ばれて急いできたけれど、間に合わず。秋山尚洋(32)さんは1時間14分46秒。レースの感想を求めると、内臓が傷むほど風が強かった、まっすぐ走っていても横風で曲がってしまうほどに、と語る。
男子ハーフの表彰式では、心身医学の原さんがゴールド・メタルを地面に落とすハプニング。2位の加曾利喜雄(28)さん、3位の平野賢(25)さんも表彰台のうえで笑いが止まらない。
女子ハーフマラソンのトップがゴールにやってきた。円山優子(37)さんは1時間29分52秒。新潟からの参加である。平坦なコースで気持ちよく走れた。大阪国際女子マラソンに出場する、その前哨戦として参加したという。
ランナーに順位表の紙を渡す「おじさん」が、強風で飛ばしてしまったことから、女子ハーフ・2位のランナーは自分の順位がわからず、帰ってしまった。20位まではタイムを鉛筆書きしてくれる。21位からのランナーは腕時計をみて、自分のタイムを知る。『完走記録書』はだれもがペンで書き込むことになる。フルマラソンでも、半分で止めたらハーフマラソンの完走証が渡される。
「オリンピック記録を書き込むような、そんなスポーツマンはいませんよ」。会長はランナーを信じる。フルマラソン男子1位は斉藤勝(36)さんで、3時間51分33秒(スタート時のロス修正はなし)。気温は暑くも、寒くもなかった。風がきつかったので、16キロまでは飛び出さず、集団の中に入り、風除けになってもらった。その先はいっきに独走。2位の岡田亘平(28)さんを大きく引き離した、作戦勝ちだった。宇野議浩(27)さんにコメントを求めると「えっ、3位ですか」とおどろいていた。順位表の紙は風に飛ばされたままらしい。
表彰台に上がれないランナーたちから話を聞くと、都内で1月のフルマラソンは魅力とか、2キロごとの表示が出ているから自分のペースが作りやすいとか、機械的な大会より好きだとか、話してくれた。会長は今朝、強風で2キロ表示が全部倒れていたから、立て直してきたと語っていた。
3月20日には同じ荒川の河川敷を使う東京・荒川市民マラソンがある。公認レース。昨年度の参加者は日本で二番目に多い、1万7992人(ランナーズ資料)である。
元祖・市民マラソンの「おばちゃん」スタッフから甘酒をもらい、身体を温めながら、その違いを考えてみた。会長やスタッフを見ていると、日本人が別れかけている、運動会から発展したスポーツ運営の原点があると思えた。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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NHKラジオ体操が流れる。六十代の女性・木戸指導員の下で、参加者全員が小中学生にもどったような表情で体操がはじまった。フルマラソンのスタートは午前9時30分。ランナーが緊張顔でスタートラインにならんだ。会長がピストルを頭上高く構えた。カウントダウンがはじまる。10秒、5、4、3、2、1秒。ピストルがならず、空砲。ランナーは爆笑。だれも走り出さない。
「ピストルに油をやらなかったからだな。あぶら汗ばかり出る」。
ユーモアたっぷりの会長の言い訳で、ランナーの笑いがなおさら止まらない。1分後には、口で〈バーン〉と声をあげる。また、笑う。大時計の表示はだれも直さず、そのまま。3000円の参加費を払った、一級河川・荒川の河岸を走るマラソン大会である。多少のタイム誤差なら許されるのが、第37回新春・東京喜多(北)マラソンである。毎年、新春(喜多大会)と六月(無名月大会)の2回おこなわれている。
歴史は長い。元祖・市民マラソンの発祥地だと、会長は自慢する。東京オリンピックの前年の、1963(昭和38)年から実施されている。「その当時は、市民が42キロ走るのは変人・奇人といわれたものですよ」。若かった愛好会のスタッフがいまや六、七十代の年齢層となっている。スタッフというよりも、下町のお手伝いさんである。大会運営の意思統一はあまり図られていない。それだけにミスが多く、ちぐはぐなユーモアたっぷり大会である。
ハーフが15分遅れでスタートした。記録係の原さん(まだ七十歳じゃないという女性)に参加人数を聞けば、会長じゃないとわからないという。彼女は正真正銘の医師である。外科医とか、内科医でなく、心身医学の専門家だという。マラソンとの関係を尋ねると、自閉症や欝病の参加者がいれば、相談に乗れるという。そういう人がハーフ21キロ、フル42キロを走るのだろうか。
大会会長に参加人数を尋ねると、「夏は1000人、1月は700人。昨日雨だったから、もっと少ないかな」という答え。だれもが手計算で実数を集計する気などないようだ。主催者が参加者の正確な数を発表できないのが、この大会の特徴のひとつ。
「去年、甲子園にいった慶応高校野球部が参加しているよ。拓大マラソン部は箱根駅伝に出るまえ、この大会の常連だった」。会長からさらに話を聞けば、この日の真夜中の一時半から、みずから細いワイヤロープを使い、車のライトを照らし、コースを計測したという。毎年同じコースじゃないの?
「マラソンの規定は路肩から一メートルのところ。河川敷は水溜まりが多くできるし、それを避けて通るから、遠回りになる。ランナーのために実測してやる」。会長にはきめの細かさと律儀がある。思いやりかもしれない。しかしながら、スタート前は快晴。水溜まりが乾けば、距離が短くなると思うが、昨晩の強い雨ではそこまでは考えられなかったようだ。
「なんでも会長」も特徴のひとつ。甘酒の担当「おばさん」が腰痛の注射をうって手伝いにきたという。塩加減、生姜の加減までも会長に味見をしてもらう。ハーフマラソンのトップがやってきた。会長の指示がなかったのか、ゴールテープ係が居ない。呼ばれて急いできたけれど、間に合わず。秋山尚洋(32)さんは1時間14分46秒。レースの感想を求めると、内臓が傷むほど風が強かった、まっすぐ走っていても横風で曲がってしまうほどに、と語る。
男子ハーフの表彰式では、心身医学の原さんがゴールド・メタルを地面に落とすハプニング。2位の加曾利喜雄(28)さん、3位の平野賢(25)さんも表彰台のうえで笑いが止まらない。
女子ハーフマラソンのトップがゴールにやってきた。円山優子(37)さんは1時間29分52秒。新潟からの参加である。平坦なコースで気持ちよく走れた。大阪国際女子マラソンに出場する、その前哨戦として参加したという。
ランナーに順位表の紙を渡す「おじさん」が、強風で飛ばしてしまったことから、女子ハーフ・2位のランナーは自分の順位がわからず、帰ってしまった。20位まではタイムを鉛筆書きしてくれる。21位からのランナーは腕時計をみて、自分のタイムを知る。『完走記録書』はだれもがペンで書き込むことになる。フルマラソンでも、半分で止めたらハーフマラソンの完走証が渡される。
「オリンピック記録を書き込むような、そんなスポーツマンはいませんよ」。会長はランナーを信じる。フルマラソン男子1位は斉藤勝(36)さんで、3時間51分33秒(スタート時のロス修正はなし)。気温は暑くも、寒くもなかった。風がきつかったので、16キロまでは飛び出さず、集団の中に入り、風除けになってもらった。その先はいっきに独走。2位の岡田亘平(28)さんを大きく引き離した、作戦勝ちだった。宇野議浩(27)さんにコメントを求めると「えっ、3位ですか」とおどろいていた。順位表の紙は風に飛ばされたままらしい。
表彰台に上がれないランナーたちから話を聞くと、都内で1月のフルマラソンは魅力とか、2キロごとの表示が出ているから自分のペースが作りやすいとか、機械的な大会より好きだとか、話してくれた。会長は今朝、強風で2キロ表示が全部倒れていたから、立て直してきたと語っていた。
3月20日には同じ荒川の河川敷を使う東京・荒川市民マラソンがある。公認レース。昨年度の参加者は日本で二番目に多い、1万7992人(ランナーズ資料)である。
元祖・市民マラソンの「おばちゃん」スタッフから甘酒をもらい、身体を温めながら、その違いを考えてみた。会長やスタッフを見ていると、日本人が別れかけている、運動会から発展したスポーツ運営の原点があると思えた。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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