日本では毎年3万人以上もの人たちが自殺している。ただし、3万人と言われても、それがどれだけ多いのか、あまりピンと来ない人もいるかもしれない。例えば、比較的身近な「交通事故死の3倍」といえば、少しは実感できるのではないだろうか。

 さらに、自殺の多さを物語る統計がある。厚生労働省が公表している『平成16年 人口動態統計月報年計(概数)ーー概況死因順位(1〜5位)別死亡数・死亡率(人口10万対)、性・年齢(5歳階級)別』によると、20〜39才で亡くなった人の死亡原因第1位は、なんと自殺なのである。不慮の事故や病気などではなく、自ら命を絶った人が一番多いというわけだ。

 ちなみに10代は不慮の事故が1位で、40代以上は悪性新生物(がん)が1位となっている。

 また男性に限ってみてみると、事態はさらに深刻だ。20〜24才で23.8%、25〜29才で27.3%、30〜34才で30.5%、35〜39才で35.4%、40〜44才に至っては、実に44.3%もの人が、自殺で亡くなっているのだ。およそ半数近くとは驚きである。

 このような深刻な状況にも関わらず、自殺者を減らすための対策は、交通死亡事故などに比べて遅れている感が否めない。もちろんそういった対策もあるにはあるが、一般的に知られていないのが現状だ。

 自殺に関するニュースを報道すれば、その影響を受けて自殺者が増える、いわゆる「寝た子を起こすな」という議論もあるだろう。あるいは、自殺問題は繊細なので、扱いにくいのかもしれない。あまりに発生する数が多いので、よほどセンセーショナルでなければ、取り上げられないという面もあるだろう。

 しかし、いまこそ自殺問題をタブー視することなく、オープンに語っていくことが重要ではないだろうか。いつ私たちの身の回りで起こっても、なんら不思議ではない。事態はそこまで切迫しているのだから。(文/verb)