SFには、必ずといっていいほど出てくる兵器がある。そう、「ビームライフル」だ。「ピュンッ」という音とともに銃身からカラフルな光線が発射され、一瞬にして標的を破壊する。私たちが子供のころから知っている架空の兵器だ。だがしかし、それが「架空のファンタジー」ではなくなってきているとしたら?

 アメリカ軍は目下、瞬時にして標的に到達し、狙いは正確で、しかも無尽蔵に発射しつづけられる「指向性エネルギー兵器」(Directed Energy Weapon)と呼ばれる、電磁エネルギーのビームを開発しているという。

 しかもそれらは、私たちが思っているほど物騒な代物ではなく、想像以上に効果的に働くようだ。スター・ウォーズに出てくるビームライフルのように、ジェダイの騎士が自らの身体能力を活かして跳ね返せるほど遅くはなく(なんせ光速なのだ!)、効果範囲も自在に設定できる。また、殺傷するのではなく、目つぶしや混乱などを引き起こして無力化させる非殺傷兵器にもなりえる。ただ、この件に関しては非人道的兵器であるとして、その使用の是非が問われ、95年10月の通常兵器禁止条約の改正にて、眼つぶしレーザーなどの使用禁止または制限が採択された。日本も97年6月に同条約を批准している。

 「米海兵遠征隊ライフル分隊(MERS)プログラム」で指向性エネルギーに関連したプロジェクトを統括しているシステムエンジニア、ジョージ・ギブス氏は、「私が目指しているのは、全員を射って、なおかつ誰も殺さない方法だ」と語っている。

 だが、反対意見もあるようだ。「指向性エネルギーは、われわれが現在のところ気付いておらず、治療することもできない、新しいタイプの損傷を発生させる可能性がある」と、赤十字国際委員会のドミニク・ロイ氏は言う。また、指向性エネルギーの人体への影響に関する研究が一般に公開されていないことに対して、政府外部からは懸念する声も出ているようだ。

 ちなみに冒頭で述べた「ビームライフル」だが、実はもうすでに実用化されている。ただしスポーツとしてだ。この10kgほどの重量があるライフル型の光線銃で10m先の小さな的に対してビームを照射し、得点を競う競技は日本でもプレイが可能。近年は、高校生の全国大会なども開かれており、物に当たっても爆発せず、人に当たってもケガをすることがないとか。

 はたしてビーム兵器は、人体に害を及ぼさない安全な兵器か、それとも新たな悪魔の武器となるのか、研究結果が待たれている。(文/verb)