「カラオケの鉄人」銀座店(提供:鉄人化計画)

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「カラオケの鉄人」などを運営する鉄人化計画<2404>は、業界最後発ながら独自のカラオケシステムを開発し、楽曲数の多さで差別化を図ってきた。今期、売上高は順調に推移しているが、新規出店の遅れと既存店の売上減少で、先月28日に業績予想の下方修正を発表した。日野洋一社長に、同社の戦略と今後の出店計画などについて聞いた。

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――前期(04年8月期)の業績は?

 売上高が39億5500万円、経常利益が2億1200万円だった。

――今期(05年8月期)の業績予想と今後の方針は?

 今期の業績は売上高が45億1800万円で、2桁(14.3%)の成長を確保する見通し。経常利益は当初予想の2億4500万円から1000万円に大きく下方修正した。

 計画で上半期の予定だった3店舗の出店が下半期にずれたことが響いた。新店を出店すると当該期では出店コストが吸収できず、費用だけ計上することになる。第4四半期にも2店舗出店しており、今期の収益に全く貢献しない。

 既存店の売上げが減少していることが、もう1つ大きな要因。カラオケ業界全般で厳しいと評されているが、国民的なヒット曲がこの1年間出ていない。いろいろなレジャーが多様化する中で、業界全体としてヒット曲に依存する傾向があり、われわれもひきずられた。

 また、複合カフェ事業で、予定していなかった4店舗を出店することになり、大きく費用を計上した。予想より客に認知されるスピードが若干遅く、収益効果が出るのが来期以降になる。

 ライフスタイルも、アミューズメントに対する嗜好も非常に多様化している。来期以降は、ヒット曲の有無や、業界全体のマーケットに影響を受けずに成長していくことを考えている。社名にある「鉄人」を「本質を追及し、究極の域に達した者に与えられる称号」と定義しているが、当社はその名の通り、本質を追求していく。つまり、カラオケでいうと歌そのものを差別化して、原点をきちんと確認しながら、楽曲の多様化、曲数の最大化を実現し、ナンバーワンになる。

 顧客にとっては、好きな歌、他店では歌えない歌が、「鉄人」に来れば歌えるのが最大の差別化。演歌だとか、パラパラ、トランス、洋楽など多様化するジャンルを開発したり、外国から仕入れたりして、細かくきちっと掘り下げ、独自のシステムの中に独自のコンテンツとして供給していく。既存店の売上げについてはこういった面で回復していきたい。

 出店地域については、関東で50店舗を中期経営計画で目標としているが、大手のカラオケ会社も同地域に出店するようになり、予想を立てた頃と状況が少し変わり、この地域は出店過剰気味になっている。少し戦略を変え、地方の中核都市やターミナルに出店し、一定の出店数を確保したい。

 これまでは自社直営店の運営で事業を行ってきたが、当社の事業の半分はシステム開発会社でもあり、中長期的に自社で出店しない予定の地域には、「鉄人システム」を販売・レンタルすることに決めた。6月に松山で1店舗始めており、来期はこうしたシステム販売・レンタルでも収益をあげ、従来どおりの成長路線に戻れるよう施策をうつ。

――どのような形での社会貢献を考えていますか?

 フランスの思想家ロジェ・カイヨワが遊びを4つに分け、「アゴン」(競争:スポーツなど)、「アレア」(運:賭け、くじなど)、「ミミクリ」(模擬:物まね、演技など)、「イリンクス」(眩暈:ジェットコースター、メリーゴーランドなど)と名づけたが、カラオケなどは「ミミクリ」に分類される。

 マイクを持って自分を主役化するのが楽しいと思う気持ちがある。カラオケをすることは、仕事・勉強という実生活から解放され、何かに熱中・陶酔するという遊びの定義を満たすこと。

 仕事など、しがらみから解放されないことで軽度なストレスを感じることが日本全体に蔓延している。寄付やメセナ活動より、遊びを提供し、遊びの定義を満たすようなコンテンツや面白さを提供できれば、それ自体が社会貢献になると思う。一人でも多くのお客さまにわれを忘れて熱中してもらうこと、それこそが当社の社会貢献だと思う。【了】

【会社概要】
商号株式会社鉄人化計画

設立

1999年12月
上場04年7月(東証マザーズ上場:証券コード 2404)
資本金4億8850万円
売上高39億5500万円(04年8月期単体)
代表取締役社長日野洋一(ひの・よういち)
従業員数86人(05年2月末)
本社東京都目黒区中目黒2-6-20
電話番号03-5773-9181(代表)
URL http://www.tetsujin.ne.jp/


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