今週のお役立ち情報
<誰かが殺した>9m先へのダイビングは無理
2005年06月07日09時05分 / 提供:PJ
【PJ 2005年06月07日】−
去る4月27日、かねてから私が起こしていた神戸地方裁判所への国家賠償請求事件「父の死は、自殺ではなく他殺。警察と検察はずさんな捜査で自殺と速断し、適正な捜査を怠った」として、国と県を相手に総額1000万円の損害賠償を求めて起こしていた民事訴訟についての判決結果は<原告らの請求はいずれも棄却する>というものであった。第一審における係争において、被告県と原告である私は、2004年6月6日、俳優の窪塚洋介さんがマンション9階の自室テラスから、9メートル離れた地点に落下した事案について、各々の意見を立証するために、当時の新聞記事を添付して、裁判所に意見書を提出した。
被告側の意見
原告らは、故省三の落下位置が入江ビルから不自然に離れているとし、このことが、故省三が殺害された証拠であるかのように主張するが、故省三が入江ビルの直近に落下していないことは、とりもなおさず故省三が自ら飛び降りたことの証左といえる。大人の人間を6メートルないし8メートルも離れた位置へ放り投げるのは多人数でなければ不可能であるし、上野正彦氏の著書『死体の叫び』によれば、右足を宙に浮かせた状態で、左足で軽く蹴り出しても2メートル離れた位置まで移動するというのであるし、地上約26メートルのマンション自室テラスから飛び降りたと思われる俳優の窪塚洋介氏に至っては、マンションから約9メートルも離れた地点に落下していたのである。
「窪塚洋介さん飛び降り」新聞記事の概要は次の通りだ。調べによると、マンション住人から、「目の前を人間が落ちていった」と119番があった。このマンションは11階建てで、9階の高さは約26メートル。建物から9メートル離れた、高さ2メートルの金網のフェンスがくぼんでいることから、窪塚さんはフェンスに当たった後、芝生に落ちたとみられる。
飛び降り自殺の現場を調べた経験がある警部補も、故省三の落下位置に不審点を感じなかったのであるし、刑事警察部門の経験が豊富な副署長も、11階、12階という高いところから飛び降りた場合、7ないし8メートル離れた位置に飛ぶのは常識的であると証言している。
原告は、事故発生場所のビル屋上の鉄柵高さは110センチ余もあり、容易には跳び越せない高さであること、8.63メートルもの遠くに飛ぶことは、助走をつけるにも容易でない場所である状況に加え、高所の恐怖心があり、元プロ野球選手とはいえ当時65歳の故省三が、自力で飛ぶことは、およそ不可能であると主張する。
身長176センチメートルの故省三であれば、入江ビル屋上に設置された高さ110センチメートル余りの鉄柵を乗り越えることは困難なことではない。入江ビル屋上南側鉄柵の西端には、エアコンのホースカバーが取り付けられており、エアコンホースカバーから鉄柵の一番上までは79センチメートルであるから、エアコンホースカバーの上に乗ってしまえば、容易に鉄柵を乗り越えることができるのであり、原告らの主張には理由がない。
故省三は入江ビルから6,7メートル西側の地点を頭部にして倒れていたものである。ビルから足を滑らせて落下したような場合は、ビルの直近に落下するが、故省三の落下位置がビルから離れていることは、むしろ故省三が自らビルを蹴って飛び出したと考えるのが自然である。
原告である私の意見
ビル壁から9メートル先に落下するためには、物理的に“加速”が必要であることを立証するため、私は、窪塚洋介さんの転落事件翌々日(6月8日)の新聞記事を、裁判所に提出した。
「物理的に“加速”必要」新聞記事の概要は次の通り。俳優の窪塚洋介(25)が、神奈川県横須賀市内の自宅マンション9階から転落し、9メートル先のフェンスに衝突したことについて7日、東海大学理学部の安江正樹教授(物理学)が「(テラスから)鳥のように飛び出さないと(9メートル先に)届くのは難しい」との見解を示した。同教授は時速約14キロの勢いがついていたと指摘。
マンション9階までは高さ約26メートル。衝突のクッションとなった金属製フェンスまでの距離は、マンションから約9メートルも離れている。安江教授は、「窪塚さんがテラスから鳥のように前に飛び出さないと、9メートル先に届くのは難しい」との考えを示した。安江教授によると物理学上、その距離に達するには前方への「加速」が必要になるという。高さと距離から計算すると、落下するまでの所要時間は約2.3秒。時速約14キロで前に、“ダイビング”すれば、約9メートル先に到達できる。窪塚のマンションのテラスは幅3.5メートル、奥行き5メートル。別の都内の有名私大理工学部教授も「9メートル先に落下するには、秒速2−3メートル(時速7.2キロ〜10.8キロ)程度、すなわち、人が歩くよりやや速いスピードで飛び出さなければいけないだろう」と話した。
元東京都監察医務院長 上野正彦先生の見解
飛び降り死体の検視は難しい。常識的に考えれば、ただ落ちるだけならば、建物からせいぜい1m以内が落下地点でなければならない。仮に、加速をつけて建物を蹴り込んで落下しても、せいぜい3m以内の着地と推定される。建築現場の囲いなどは、誤って作業員が落下した際に、下に通行人などが存在しないようにするために、建物から約3m離れた地点に囲っているのは、そのためである。建物から7,5mも離れた場所に着地するということは、人間の高所恐怖性を考慮した上において、人間の力学的に有り得ない落下位置である。したがって、人間の力学的に有り得ない状況下で、建物から7,5メートルの地点に落下しているということは、何名かの人間が人の足と手を持ち、ブランコのように反動をつけなければ飛ばない位置であろう。
落下位置6,7メートルは、やはり、事件性有りなのでは
落下位置が、ビル壁から6.7メートルも離れているのは異常である。事件直後、初動捜査の段階で、この異常さを見抜くことが、本来、警察官の役割なのではないだろうか。この件についても、裁判所の言及は控えられていた。
警察がいったん、「自殺」と断定した事案はなかなか覆らない。たまたま、本事件と遭遇した警察官の能力上の問題で、事件性を視野に入れた捜査が行われなかったということなのであれば、実に残念なことだ。その上、事件性があるのではないかという根拠を示しても、裁判所の判断は、結論ありきの言及ばかりであった。いったん、「自殺」と断定された事件を、事件性ありとする視点で、警察に再捜査を嘆願するために、遺族が費やす労力は、並大抵なことではない。本事件の場合、警察は、第一発見者が「飛び降りだ」と口走ったことを、全面的に採用したようである。【了】
【注】連載〈誰かが殺した〉は今回でいったん終了します。今後は事件の成り行きを見て、随時掲載していきます。
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 新納 直子【 兵庫県 】
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被告側の意見
原告らは、故省三の落下位置が入江ビルから不自然に離れているとし、このことが、故省三が殺害された証拠であるかのように主張するが、故省三が入江ビルの直近に落下していないことは、とりもなおさず故省三が自ら飛び降りたことの証左といえる。大人の人間を6メートルないし8メートルも離れた位置へ放り投げるのは多人数でなければ不可能であるし、上野正彦氏の著書『死体の叫び』によれば、右足を宙に浮かせた状態で、左足で軽く蹴り出しても2メートル離れた位置まで移動するというのであるし、地上約26メートルのマンション自室テラスから飛び降りたと思われる俳優の窪塚洋介氏に至っては、マンションから約9メートルも離れた地点に落下していたのである。
「窪塚洋介さん飛び降り」新聞記事の概要は次の通りだ。調べによると、マンション住人から、「目の前を人間が落ちていった」と119番があった。このマンションは11階建てで、9階の高さは約26メートル。建物から9メートル離れた、高さ2メートルの金網のフェンスがくぼんでいることから、窪塚さんはフェンスに当たった後、芝生に落ちたとみられる。
飛び降り自殺の現場を調べた経験がある警部補も、故省三の落下位置に不審点を感じなかったのであるし、刑事警察部門の経験が豊富な副署長も、11階、12階という高いところから飛び降りた場合、7ないし8メートル離れた位置に飛ぶのは常識的であると証言している。
原告は、事故発生場所のビル屋上の鉄柵高さは110センチ余もあり、容易には跳び越せない高さであること、8.63メートルもの遠くに飛ぶことは、助走をつけるにも容易でない場所である状況に加え、高所の恐怖心があり、元プロ野球選手とはいえ当時65歳の故省三が、自力で飛ぶことは、およそ不可能であると主張する。
身長176センチメートルの故省三であれば、入江ビル屋上に設置された高さ110センチメートル余りの鉄柵を乗り越えることは困難なことではない。入江ビル屋上南側鉄柵の西端には、エアコンのホースカバーが取り付けられており、エアコンホースカバーから鉄柵の一番上までは79センチメートルであるから、エアコンホースカバーの上に乗ってしまえば、容易に鉄柵を乗り越えることができるのであり、原告らの主張には理由がない。
故省三は入江ビルから6,7メートル西側の地点を頭部にして倒れていたものである。ビルから足を滑らせて落下したような場合は、ビルの直近に落下するが、故省三の落下位置がビルから離れていることは、むしろ故省三が自らビルを蹴って飛び出したと考えるのが自然である。
原告である私の意見
ビル壁から9メートル先に落下するためには、物理的に“加速”が必要であることを立証するため、私は、窪塚洋介さんの転落事件翌々日(6月8日)の新聞記事を、裁判所に提出した。
「物理的に“加速”必要」新聞記事の概要は次の通り。俳優の窪塚洋介(25)が、神奈川県横須賀市内の自宅マンション9階から転落し、9メートル先のフェンスに衝突したことについて7日、東海大学理学部の安江正樹教授(物理学)が「(テラスから)鳥のように飛び出さないと(9メートル先に)届くのは難しい」との見解を示した。同教授は時速約14キロの勢いがついていたと指摘。
マンション9階までは高さ約26メートル。衝突のクッションとなった金属製フェンスまでの距離は、マンションから約9メートルも離れている。安江教授は、「窪塚さんがテラスから鳥のように前に飛び出さないと、9メートル先に届くのは難しい」との考えを示した。安江教授によると物理学上、その距離に達するには前方への「加速」が必要になるという。高さと距離から計算すると、落下するまでの所要時間は約2.3秒。時速約14キロで前に、“ダイビング”すれば、約9メートル先に到達できる。窪塚のマンションのテラスは幅3.5メートル、奥行き5メートル。別の都内の有名私大理工学部教授も「9メートル先に落下するには、秒速2−3メートル(時速7.2キロ〜10.8キロ)程度、すなわち、人が歩くよりやや速いスピードで飛び出さなければいけないだろう」と話した。
元東京都監察医務院長 上野正彦先生の見解
飛び降り死体の検視は難しい。常識的に考えれば、ただ落ちるだけならば、建物からせいぜい1m以内が落下地点でなければならない。仮に、加速をつけて建物を蹴り込んで落下しても、せいぜい3m以内の着地と推定される。建築現場の囲いなどは、誤って作業員が落下した際に、下に通行人などが存在しないようにするために、建物から約3m離れた地点に囲っているのは、そのためである。建物から7,5mも離れた場所に着地するということは、人間の高所恐怖性を考慮した上において、人間の力学的に有り得ない落下位置である。したがって、人間の力学的に有り得ない状況下で、建物から7,5メートルの地点に落下しているということは、何名かの人間が人の足と手を持ち、ブランコのように反動をつけなければ飛ばない位置であろう。
落下位置6,7メートルは、やはり、事件性有りなのでは
落下位置が、ビル壁から6.7メートルも離れているのは異常である。事件直後、初動捜査の段階で、この異常さを見抜くことが、本来、警察官の役割なのではないだろうか。この件についても、裁判所の言及は控えられていた。
警察がいったん、「自殺」と断定した事案はなかなか覆らない。たまたま、本事件と遭遇した警察官の能力上の問題で、事件性を視野に入れた捜査が行われなかったということなのであれば、実に残念なことだ。その上、事件性があるのではないかという根拠を示しても、裁判所の判断は、結論ありきの言及ばかりであった。いったん、「自殺」と断定された事件を、事件性ありとする視点で、警察に再捜査を嘆願するために、遺族が費やす労力は、並大抵なことではない。本事件の場合、警察は、第一発見者が「飛び降りだ」と口走ったことを、全面的に採用したようである。【了】
【注】連載〈誰かが殺した〉は今回でいったん終了します。今後は事件の成り行きを見て、随時掲載していきます。
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 新納 直子【 兵庫県 】
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