笑顔の横峯さくら

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◇ライフカードレディース◇3日目◇熊本空港CC(6,423ヤード、パー72)◇賞金6,000万円(優勝1,080万円)◇ギャラリー8,545名◇うす曇り、20.2℃、31%、西北西2m

 横峯さくら(19=サニーヘルス)がやってくれた。首位タイで迎えた最終日、8,000人を超すギャラリーが見守るなか、18番ホールの第3打、グリーン手前25ヤードからのアプローチをカップから70cmの位置に止める。これを決めれば1打差で優勝。「これを外してもう一度ギャラリーを楽しませるか?」という父の言葉に「絶対嫌だと思った」という横峯は、慎重にこのパットを沈めた。

 この日首位でスタートした横峯だったが、やはり初優勝のプレッシャーは大きい。イーブンで迎えた16番、首位タイに自分の名前が記されたスコアボードが目に入る。優勝は意識しなかったというが、直後のグリーンエッジからのアプローチをトップして、ピンを6mもオーバーし、返しのパットも外してボギーとしてしまう。この時点で首位と1打差の2位に後退。だが、続く17番ですぐにバーディを奪い、歓喜の18番に繋いだ。

 念願のプロ初優勝。昨年のこの大会ではプレーオフに破れ悔し涙を流したが、1年後それは嬉し涙に変わった。同年代のライバル宮里藍(19=サントリー)にプロ入り後、差をつけられていた横峯だが、この優勝で一歩前進。19歳と126日での優勝は、宮里のもつ18歳と261日に次ぐ若さでのプロ初優勝だった。

 その宮里がホールアウトした横峯を迎え抱擁する。この日は1オーバーとスコアを崩した宮里だが、横峯の優勝をわが事のように喜び、目には涙を浮かべていた。

 一方、この大会のもう1人の主役、横峯の父・良郎氏も、選手以上にギャラリーからの握手攻め。親子喧嘩で話題を振りまいてきた2人だが、最後にきっちり優勝という最高の形で締めくくった。娘の性格を良く知る良郎氏は、ラウンド中にミスショットがあると「なにやってるんだ、あほ」となじり、娘は「絶対入れてやる」と発奮する。娘のさくらは「恥ずかしいですね」と最後まで父への感謝の言葉は言わなかったが、ラウンド中しばしば父に意見を求め「頼れるのは父だけだった」と振り返った。

 まだ優勝の実感が湧かないという横峯だが、本人以上にこの親子の勝利は、多くの人の心に焼きつけられたことだろう。