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[書評]ピエール・ラズロ『塩の博物誌』

[書評]ピエール・ラズロ『塩の博物誌』
ピエール・ラズロ『塩の博物誌』
【ライブドア・ニュース 2005年04月02日】−  「塩が好きだ」――そう書くとけげんな顔をする人も、ウンウンとうなずく人もいるかもしれない。

 「塩は甘い」と書いたらどうだろうか。「塩は甘い」という命題は「塩は辛い」と同じくらい正しくて、間違っている。塩にもいろいろな味がある。97年の塩の専売の廃止で、日本各地の塩の特産地が復活しつつある。世界中からも無数の種類の塩が輸入されている。塩にこだわる人も増えた。

 著者によれば、「私たちは経験上、塩は白い固体だと思っている」が、「白く見えるのは光を反射、拡散するから」で、「純粋の塩は透明」なのだ。本書は、国際的に著名な化学者である著者が「塩」をテーマに書いた、「気ままで気まぐれな、非学術的エッセー」である。

 有機化学を専門とする科学者が、なぜ、「塩」をテーマにした「エッセー」を書いたのか。それは、教育の分野で専門化が行き過ぎて、科目によって知識が分化されてしまっているからである。だから、「経済学、美術史、物理、政治学、化学、民俗学等々を総合するユートピア的教育プログラムの試論を書いてみようと思いたった」。その題材が「塩」だったということである。

 本書には「塩」に関するさまざまな話題が詰め込まれている。赤ワインをひっくり返したときに塩をかけると染みが取れるのはなぜか、雪の上に塩をまくと滑り止めになるのはなぜかなど、雑学的と思われるような知識を、科学という分析用具を使って分かりやすく解説している。

 塩をめぐる政治や歴史のエピソードは楽しい読み物になっている。サラリー(給与)の語源は、ローマの軍団兵が報酬の一部として塩の塊(サラリウム)をもらっていたことにある。塩の専売制は国家主権や支配の象徴だった。ガンジーの「塩の行進」はイギリスによる植民地支配への反抗であり、フランス革命は国家による塩の独占販売への反抗に端を発したものだった。

 「塩の味」は、「どのような“不純物”を含むかによって味が決まる。ゆえに、ワインと同じく塩には産地の個性が刻まれている」と、著者は日本語版前書きで述べている。しかし、本書には塩の地域差についての記述はない。著書は塩に関する膨大なデータを集めたとのこと。「塩論」(続編)に期待したい。(神田順子訳、東京書籍、2520円)【了】

livedoor ブックスライブドア・ニュース 佐谷恭記者
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