きょう、40年の歴史に幕を下ろす「談話室滝沢」=東京・新宿

写真拡大

東京・新宿、池袋、お茶の水の全店舗が31日午後9時50分を持って閉店、約40年の歴史に幕を下ろす老舗の喫茶店「談話室滝沢」。同日午後1時頃、「新宿中央口店」(地下1階)、「新宿別館」(2階)の2店舗が入るビルには閉店を惜しむ常連客が次々と訪れ、店内は満席状態。馴染みの客が帰り際に、店への想いをウエートレスと語り合う姿が多く見られた。新宿別館の店員は「惜しんで下さるお客様も多く、本当に申し訳なく思う」と寂しさをにじませた。

 「古き良き時代の店がなくなるのは非常に残念。これからはどこで集まればいいか、困る」。井口金治さん(84)、長谷川鈴雄さん(82)、上山弘さん(82)ら25年来通い続けた「滝沢ファン」は口を揃える。3人は第2次大戦後にシベリア抑留を経験した旧日本陸軍時代の仲間だ。毎年恒例の靖国神社参拝の時期には、昔の仲間との打ち合わせ場所はいつも「滝沢」と決まっていた。

 特に井口さんは夫婦揃っての常連客で、「私は2階(新宿別館)、妻は俳句の仲間と地下(新宿中央口店)を利用してきた」と思い出を語る。居心地が良く、東京郊外の町田から何度も通い続けた。井口さんは、滝沢の看板を見上げながら「『割引券やおかわりのサービスをやめてまでも、続けてほしい』と妻も言っていました」と話した。

 全寮制で厳しく鍛えられたウエートレスの接客マナーは、「滝沢」の名物。5年前に社員寮を廃止し、アルバイト採用も始めたが、その後もサービスの質の高さは格別だったという。

 「アルバイト採用第1期生」として、5年間店に立ち続けたウエートレスの佐藤洋子さん(31)は、「入社当時、周りは育て上げられた社員の先輩ばかりで、接客マナーを丁寧に教えてもらいました」と振り返る。佐藤さんは、閉店後は「子どもたちにダンスを教えるインストラクター業に専念する」と話し、笑顔で新宿駅に向かっていった。

 「談話室滝沢」の向かい側には最近の再開発でファッションビルが建てられ、テナントのブランド服飾店は若者で賑わう。周囲には安さを競う飲食店が並び、若者をひきつける。井口さんら“老兵”3人は名残り惜しそうに話す。「『滝沢』の存在は社会奉仕の一つ。経営は大変だろうが続けてほしかった」。【了】

関連記事・談話室滝沢がきょう閉店