先日、娘に私たちの住む区の読書感想文の小冊子が配られてきた。娘の作文は掲載されておらず、名前のみが優秀作として活字になった。私の娘は小学4年生。小学生のバンドではドラムを叩き、日曜日には柔道に通う天真爛漫な女の子だ。しかし、彼女は一昨年2月の校舎の改修工事がきっかけで、建材や接着剤等からの揮発性化合物(VOC)による室内空気汚染が原因の「シックスクール症候群」に罹患(りかん)した。

 彼女は学校で起きたシックスクールを実証するため、同年9月、発症している自分の体を悪環境に置き、大学病院の検査結果で健康被害が起きたことを自分自身で証明した。北里大学の専門医によると、彼女のような症例が一人いるということは、児童全体の20%の児童が何らかの健康被害を受けていると公言している。シックスクールの症状は、頭痛・吐き気などありふれたもののため、保護者も本人も見過ごしてしまうのだ。

 だが、彼女の努力によっても、シックスクールの発生が学校当局によって公表されることはなかった。だから、彼女のクラスメートは娘の辛さは理解することは勿論、友達へのやさしい気持ちを知らない。

 区内の小学校で有償で配布された小冊子には掲載されなかった作文を彼女の生原稿から紹介したい。娘は昨年秋、学校再改修工事のため学校へ登校できなかった時期に、「一人でも多くの人に、私のような子供がいることを知って欲しい」と願って書いたことが懐かしい。

「シックスクール」の文言で、掲載されなかった娘の読書感想文 
「そしてかえるはとぶ」を読んで。 

 主人公良は病気になりずっと病院にいました。良は言葉がうまくしゃべれず、同級生にバカにされる。

 ある日、ケガをしてしまい、ずっと「そうぐ」をつけなければならなくなりました。そのことでまたいじめられる。でも良はいじめなんて気にせず、兄ちゃんや両親にはげまされながらリハビリを続けました。ようち園、小学校と、スクスクと育ちました。どこまでも明るくマイペースな良くんを、私はえらいなぁと思いました。

 私は、小学校三年生の時、シックスクール症候群になりました。頭痛が起きて、保健室に行ってもどってくると、クラスメートに「おまえって、ズルだよな。本当は痛くなんてないんだろ? 勉強したくないからって、行くんじゃねぇよッ」と言われました。

 私はそんなことがあったことを両親に言わず、なるべく気にしないで学校にいっていました。でも、意地悪や悪口を毎日されて、たまに泣きながら帰ってきたこともあります。

 この本の主人公の良は、まだ四才なのに、私のようにいじめられたり、からかわれても泣かずに元気にすごしている。それに比べて私は、ちょっと弱虫だなと思いました。

 もし、三年生の時に、この本に出会えてたら、私ももうすこし明るく毎日を過ごせたなと思いました。
 
 良くんから「勇気」をもらい、ちょっぴり元気になりました。

読書感想文おわり 

 娘が仔細を語らず、ただシックスクールという言葉に何を託したのか…。そのはるかな思いは父親である私の想像を越えている。私は、パブリック・ジャーナリズムの名のもとに、無名の市民の思いを広がっていけばすばらしいことだと思っている。

 私の妻は、「シックスクール」という文言あったために娘の作文が、掲載されなかったのは明白な事実であると断定した。彼女はいまペ・ヨンジュンにはまっているが、市民活動を通してシックスクール問題とも戦っている。【了】