「やっぱり留学生は働くんだね」。

 日本に留学中のある外国人学生は、アルバイトをしていることを周囲の人たちに話したときにそう言われたという。ベトナム人学生のJさんもアルバイト先の同僚から、「勉強するために来ているんじゃないの」と問われた経験がある。「日本の物価は高いし、大学院に進学したいから、働きながら勉強するのは当たり前なのに」と彼女は言う。

 ファストフード店やコンビニエンスストアなどで、外国人従業員の姿をよくみかける。その多くが、学校に通いながら働いている学生だ。日本人の大学生にとって、アルバイトは日常生活の一部になっているし、外国人学生にとっては、アルバイトをすることが特別の意味を持っている。しかし日本社会には、外国人学生が働くことに対して好意的でない意見もあるようだ。

学生数は増加、在留資格の認定基準は厳格化

 外国人が日本で行うことができる活動の種類と期間を定めたものを、「在留資格」という。外国人学生の在留資格は、在籍する学校によって「留学」と「就学」に分けられる。大学生や大学院生は「留学生」、高校生や語学学校などの生徒は「就学生」と呼ばれる。

 ここ数年、来日する留・就学生の増加が著しい。当時の中曽根康弘首相の構想をもとに、文部省(現文部科学省)が1983年に策定した「留学生受け入れ10万人計画」の数値目標は、20年後の03年に達成された。04年には、対前年度比7.1%増で、過去最高の11万7302人に上った(04年5月現在)。就学生を合わせると、外国人学生の総数は約17万人になる。

 しかし、03年11月以降、在留資格を認定する方針が厳しくなり、「学生の経済力の証明として300万円程度の残高証明書を求められるようになった」とも言われている。04年4月期に東京入国管理局に提出された、就学生からの在留資格の申請は、1万1600件。許可されたのはそのうちの5200件(45%)だった。

 04年7月には、「中国、ミャンマー、バングラデッシュ、モンゴルの4か国については『最終学歴卒業証書調査票』や『預金残高証明書調査票』を提出すること」という、在留資格を申請する時の注意事項が、各地方入国管理局から管轄地域の日本語学校へ通知された。05年度4月期の在留資格の許可率が低ければ、営業を続けられない語学学校が出てくる、という話もある。

入国管理局も外国人学生のアルバイト専念を警戒

 就学生の在留資格申請に対する許可数が減少したことについて、入国管理局にたずねた。担当者によると、法務省の基準省令には、「300万円の残高証明が外国人学生の在留資格を認定する条件」と明記されているわけではなく、また出身国で在留資格の要件に差が出ることもないとのこと。しかし、ここ数年に起きた外国人学生の犯罪に言及し、「本来の目的である勉強に専念できず、仕事を優先させるのは、やはりおかしなことになる」と話す。

 「勉強しながら働く」外国人学生への日本社会の視線は、依然厳しい。(つづく)


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