「あさかぜ」の出発時刻を告げる東京駅10番線の電光掲示板。(撮影:佐藤 学)

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「ブルートレイン」の愛称で親しまれたJRの寝台特急「あさかぜ」と「さくら」が28日、東京駅からそれぞれ昭和の良き思い出を乗せて最後の旅に出発した。

 「あさかぜ」は1956年11月に東京〜博多間に、「さくら」は1959年7月に東京〜長崎間に寝台特急として登場。車体の色から「ブルートレイン」の愛称で親しまれ、「あさかぜ」は当時「走るホテル」と呼ばれ、「さくら」も車中エピソードをテーマにした映画が数本製作されたほどの人気を博したが、山陽新幹線の登場により利用者が減少、3月1日のダイヤ改正に伴い、およそ半世紀の歴史に幕を下ろすことになった。

 JR東京駅の10番線ホームには、最後の姿を一目見ようと約1000人(JR東日本発表)の鉄道ファンや帰宅途中の通勤客が詰めかけた。午後7時、「ピーッ」という汽笛を合図に動き出した「あさかぜ」は、大きな拍手と「ありがとう」の声に見送られて、一路下関に向かってホームを離れた。これより1時間前には「さくら」がラストランに出発した。

 50年代後半から60年代にかけて出張で「さくら」をよく利用したという千葉県船橋市の竹内さん(75)は「多くの人が利用しており、食堂車も大変混雑していた」と当時を振り返った。「今夜はお酒と料理を『さくら』に持ち込み、思い出にふけりたい」と乗車前に語った。

 また、妻子と見送りに来ていた東京の歯科医の勝連義之さん(32)は「1年半前、生まれたばかりの我が子を乗せたのが『あさかぜ』だった。寝台列車は乗ること自体が楽しい。今は時間をお金で買う時代かもしれないが、寝台はまったく違う考え方ですね」と語り、「なくなるのは時代の流れなんですかね」とさみしげな表情を見せていた。【了】