新型「フィット」の売れ行きが注目される(写真は現行モデル)

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   ホンダの2007年度上半期(4〜9月)の国内新車販売は登録車と軽自動車を合計した総台数でスズキダイハツ工業に抜かれ、定位置の3位から5位に転落した。軽自動車販売が前年の4分の3以下と不振で台数を稼げなかったのが響いた。救世主と期待されるのが2007年10月に登場する新型「フィット」。ホンダの国内販売は昔から商品力次第で振れ幅が大きいと言われてきた。安定感の無さを揶揄されても「フィット」に期するところは大きい。ただ、ヒット車が生まれにくくなっている国内市場だけに、過大な期待は禁物かもしれない。

販売不振といえば日産からホンダ

   上半期の新車市場は27年ぶりに250万台を割り込む低調な結果だったが、なかでもホンダの元気のなさが目立った。登録車は7.9%減の18万1,629台、軽自動車は26.2%減の11万257台で合計は15.8%減の29万1,886台。31万2,874台のスズキ、29万2,466台のダイハツに逆転を許した。

   これまでは販売不振といえば日産自動車の名が真っ先に挙げられてきた。しかし日産は新型SUV「デュアリス」「エクストレイル」投入やミニバン「セレナ」の健闘で長いトンネルを抜けつつあり、入れ替わりにホンダがじわじわとポジションを落とした格好だ。

   ホンダに挽回のカードはあるのか。だれもが今月中旬、フルモデルチェンジを迎える「フィット」を思い浮かべる。01年に登場するや翌年に「カローラ」の車名別連続ベストセラーの記録を33年でストップさせた若き大黒柱の投入は、今年の国内事業で最大のイベントに位置づけられている。

   今年のホンダの軽自動車不振は、この「フィット」投入と関係がある。日本中の2,300店以上のホンダディーラーは90万台にのぼる現行フィットの保有ユーザーに総アタックをかけ、新型の受注に励んでいる。

「前回ほどの大ヒットになるかというとむずかしいかも」

   新型だけではない。現行車の販売実績次第で新型の配車台数が決まるため、現行車の販売にしゃかりきにならざるをえない。その証拠に上半期の「フィット」は前年比7%減の4万64台を売り、登録車の第3位と大健闘なのだ。良くも悪くも今年はフィットの年というわけだ。ちなみに昨年は全ディーラーが軽を扱うことになり、期待の「ゼスト」が登場したことから軽一辺倒の一年だった。

   毎年、軸となる車種を決めて盛り上げを図るのは悪いことではない。しかし、20以上ある商品の大半が"睡った"状態では販売を安定させることはむずかしい。 まして、縮小傾向の国内市場は大ヒットを生む余地が少なくなっている。登録車で20万台を超えたのは02年の「フィット」(25万790台)が最後である。

   ホンダ幹部は新型「フィット」について「いい車に仕上がった」と自信を見せる。一方で「前回ほどの大ヒットになるかというとむずかしいかもしれない」とも話す。得意の北米を始め、中国、欧州など世界で成長し利益を稼ぐホンダには「日本市場は特殊だから…」(首脳)とホームマーケットにもどかしさがある。新型「フィット」の売れ行きはホンダのホームゲームを左右する。